リースバックは法⼈も対象! 企業が利用するメリット・デメリットを紹介

ビルが立ち並ぶ街並み

「リースバック」と聞くと、個人向けサービスのイメージを持つ方が多いかもしれません。

実は、リースバックは企業などの法人向けサービスもあります。法人向けリースバックは、融資や不動産売却による資金調達が難しい企業に向いているサービスです。

この記事では、法人向けリースバックについて解説します。

企業がリースバックを利用するメリット・デメリットや、利用をおすすめできるケースを紹介します。

なお、リースバックについての基本知識等の詳細解説と大手リースバック会社の比較は以下の記事も合わせてご覧下さい。

記事執筆・監修
著者紹介 プロフィール写真

穴吹興産 竹島 健

区分投資事業部 企画系(バックオフィス)課長

【資格】
・宅地建物取引主任者
1級ファイナンシャル・プランニング技能士

【経歴】営業マンとして新築マンションで12年、その後7年間リースバックを中心に中古マンション買取事業に従事。優秀営業マン賞等受賞。現在は経験を活かしてリースバック検討に役立つ情報を発信。

リースバックの取材に関する窓口はこちらstock_mansion@anabuki-kosan.co.jp

目次

リースバックは法人も利用可能!

テーブルと椅子が並ぶ会議室

不動産を売却し、同じ物件を賃貸契約のもとで利用し続ける仕組みを「リースバック」と言います。

一般住宅向けのイメージが強いサービスですが、法人が利用することも可能です。そもそも、リースバックは企業間で行う取引として誕生しました。

そもそもリースバックは法人向けのサービス

リースバックは、1930年代のアメリカで誕生しています。

1940年代にはチェーン・ストアの不動産取得方法として活用され、次第に一般企業にもリースバック取引が広まりました。

一方、日本でリースバックが盛んになったのは、バブル崩壊後の1990年代です。不動産価値の下落や金融不安により、企業の資金確保手段として法人向けリースバックが行われました。

その後、一般住宅などの個人向け不動産にもリースバックの仕組みが取り入れられ、今日に至っています。

このようにリースバックは法人向けサービスが始まりであるため、企業や団体によるリースバックの活用は至極当然のことと言えます。

法人向けリースバックの対象は不動産だけではない

法人向けリースバックの対象は、オフィスや工場、土地などの不動産だけではありません。

以下のような資産も、リースバック会社によっては取り扱い対象としています。

・産業機械、車両、船舶、ロボット
・パソコン
・厨房機器
・医療用機器

こうした事業用の機器もリースバックで売却できるため、個人向けに比べて法人向けリースバックのほうが活用範囲が広いと言えます。

法人向けリースバックの契約手順

法人向けリースバックの契約手順は、個人向けリースバックと基本的に同じです。一般的に、以下の流れで契約を進めます。

1.リースバック会社への相談・申し込み
2.面談・査定
3.審査
4.契約内容の確定・契約締結
5.決済(資金の受け取り、賃貸契約の開始)

上記の流れは、リースバック会社によって細かい部分が異なります。リースバックのスケジュールを計画する際は、あらかじめリースバック会社の案内を確認しておきましょう。

法人がリースバックを利用するメリット

ビルの窓に浮かび上がる「FINANCE」の文字

企業や団体でもリースバックを利用できるとわかりましたが、どのようなメリットがあるのでしょうか。具体的に、6つのメリットを紹介します。

1.すばやい資金調達

リースバックは、迅速な資金調達が可能です。不動産や事業用機器といった価値の高い資産を売却するため、まとまった資金の確保が期待できます。

金融機関の融資ほどの厳格な審査がない分、申し込みから資金を得るまでも比較的スムーズです。

また、通常の不動産売却であれば、売却先を探す工程に時間がかかります。

しかし、リースバックであれば、担当の不動産会社が買い取るため、すぐに売却できるわけです。

あるいは、不動産会社が売却先を探してくれる場合もあります。売買代金は基本的に一括で支払われるので、すばやく資金を確保できます。

2.資金を自由に使える

リースバックで得た資金は、自由に使えます。融資の場合、あらかじめ「資金使途」として資金の使い道を定めなくてはいけません。

資金使途は企業の将来性の判断材料となるため、業績悪化などのネガティブな理由による融資は受けられない可能性があります。

リースバックであればそもそも金融機関の審査が不要な上、資金使途も問われません。借入金の返済や税金・給料の支払いといった、一時的な業績悪化の補填に資金を充てられます。

他にも、店舗改装や新規設備の購入など使い道は自由です。

3.物件をそのまま使える

リースバックで売却した物件は、そのまま利用し続けられます。

売却後に賃貸契約を結んで物件を使用するため、通常の不動産売却のように事業所を移転する必要がありません。自宅兼事業所であれば、引越しせずに住み続けられます。

事業所の移転には、さまざまな影響があります。たとえば、社員の通勤時間が長くなったり、取引先への周知に手間がかかったりするでしょう。

リースバックは引越し費用や手間が生じず、移転期間中の生産性低下も防げます。同じ場所で事業を継続することで、移転による負担を回避できるわけです。

4.キャッシュフローや財務状況の改善

リースバックは、企業の財務面にも好影響を与えます。不動産を所有している場合、固定資産税や管理費、保険料といった維持費用が必要です。

リースバックにより不動産を手放すことで、維持費用を減らせます。代わりにリース料金が生じますが、経費計上により法人税の削減が可能です。

また、企業は自社の財務状況の一覧表「貸借対照表(バランスシート)」を作成します。

不動産を売却すれば、事業に用いる不動産を貸借対照に記載しない「オフバランス化」もできます。不動産の価格変動や災害による滅失リスクがなくなる上、自己資本比率が上がることで企業価値の向上も見込めます。

5.売却後に買い戻せる

不動産の売却後に買い戻せる点も、リースバックならではのメリットです。個人向けリースバックと比べると、法人向けリースバックは買い戻しやすい傾向があります。

一時的に資金繰りが悪くても、将来的に収益が回復する企業は珍しくありません。そのため、収益改善により資金を確保できた際に、不動産を買い戻しているわけです。

なお、将来的に確実に買い戻したい場合、あらかじめリースバック会社にその旨を伝えて「再売買の予約(再売買予約権)」を契約に練り込みましょう。

取り決めた期限内であれば、あらかじめ定めた再売買代金を支払うことで不動産を買い戻せます。

6.機会損失に繋がる誤解を防ぐ

リースバックによる資金確保は、機会損失の予防にもなります。単純に不動産を売る場合、移転作業や売却先を探す広告出稿などの目立つ活動が必要です。

「あの会社・店舗は潰れそう」といった誤解を受け、客足が遠のいたり新規受注を控えられたりする可能性がゼロではありません。

リースバックであれば、人目につくような活動は不要です。リースバック会社と内々でやりとりが完結するので、あらぬ誤解や噂が起きません。これまで通り事業を継続できるため、機会損失の回避に繋がります。

法人がリースバックを利用するデメリットや注意点

「CAUTION」の文字を示す指差し棒

法人向けリースバックの利用を検討する際は、事前にデメリットも理解しておきましょう。法人がリースバックを利用するデメリットを3つに分け、注意点を解説します。

1.賃料が相場よりも高い場合あり

リースバックは賃料を支払わなくてはいけませんが、相場よりも高額になる場合があります。リースバックの賃料は相場にかかわらず、物件の売却価格を基準として決まります。

したがって、売却価格が高いほど、賃料も上昇する仕組みです。

賃料は、自社所有であれば生じなかった新たなランニングコストとなります。高すぎる賃料だとかえって自社の経営を圧迫する可能性があるため、契約時の賃料設定は慎重に行いましょう。

2.売却価格は相場よりも安くなりがち

賃料は相場よりも高い一方で、反対に売却価格は相場よりも安くなりやすいです。買主の立場からすると、リースバックで取得した不動産は自由に活用できません。

賃貸契約後の家賃滞納リスクや不動産相場の変動リスクも考慮する必要があるため、相場よりも安く購入する必要があります。

まとまった資金調達を目的としてリースバックをするなら、安すぎる売却価格にならないよう交渉が必要になります。

そもそも事業所を移転しても問題ないのであれば、リースバックではなく通常の不動産取引で売却しても良いでしょう。通常の不動産取引なら相場に近い売却価格となるので、著しく安く売ってしまうリスクを抑えられます。

3.不動産の改修は許可が必要

リースバックで売却・賃貸契約を結んだ不動産は、自由に改修できません。

同じ物件で事業を続けていても、物件の所有者はリースバック会社や第三者になります。自社判断で勝手に改修や改築はできないため、所有者の許可が必要です。

また、修繕費用についても、所有者と自社のどちらが負担するのかを決めなくてはいけません。「経年劣化の修繕費用は貸主が負担」「設備の修繕費用は借主が負担」など、契約時にあらかじめ決めておきましょう。

法人向けリースバックをおすすめできる企業

資料を机に並べて提案するビジネスマン

法人がリースバックを利用する目的は、資金確保や収益改善が一般的です。

しかし、単に資金確保や収益改善がしたいのであれば、融資または通常の不動産売却も選択肢にあります。法人向けリースバックが適している状況として、具体的な事例を3つ見てみましょう。

1.オフィスの利用頻度が減った

オフィスの利用頻度が激減した企業は、リースバックが向いています。テレワークの導入などの理由によりオフィスに出社する機会が減ったものの、完全に手放すわけにはいかない企業もあるかと思います。

リースバックであれば、維持費用を減らした上でオフィスはそのまま使い続けられます。賃貸契約の満了時に退去できるため、不要なオフィスの削減も可能です。

2.融資に不利な理由がある

リースバックは、融資を受けられない企業にも適しています。通常、融資は厳格な審査が必要です。「財務状況が悪い」「借入金が多い」「税金の滞納歴がある」などの事情があると、審査に落ちる恐れがあります。

一方のリースバックは、財務状況にかかわらず利用できます。資金の使い道も問われず、まとまった資金を迅速に得られる手段です。融資以外の資金調達方法をお探しであれば、法人向けリースバックを検討してみてはいかがでしょうか。

3.事業所を移転できない

まとまった資金を確保したい場合、通常の不動産売却も検討するかもしれません。

しかし、事業所を移転できない企業は、通常の売却が不可能です。たとえば、自宅兼事務所や、移転による稼働停止が困難な工場などが考えられます。

そこで役立つのがリースバックです。リースバックは、事業所を移転する必要がありません。現在のオフィスや工場で事業を続けながら、売却による資金を確保できます。

法人向けリースバックは移転不要で資金調達できるサービス

リースバックは、法人向けサービスも充実しています。自社のオフィスビルや居住用不動産を売却することで、すばやい資金調達が可能です。

リースバックで得た資金は、銀行の融資と異なり資金の用途に制限はありません。新規事業への投資や借入金の返済など、自由に使えます。事業所を移転しなくて良いため、移転による機会損失の心配もありません。

ただし、リースバックの売却価格と賃料は、相場よりも不利になる傾向があります。資金調達のためにリースバックを検討する際は、メリット・デメリットを比較した上で判断しましょう。

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