リースバックは、自宅を売却した後も、賃貸借契約を結んでそのまま住み続けられるサービスです。愛着のある家だからこそ、なるべく長い期間住み続けたいと考えている方も多いのではないでしょうか。
では実際にリースバックで家を売却した場合、どれくらいの期間住み続けることができるのでしょうか?
この記事では、「リースバックをした後、何年住めるの?」「退去させられてしまうケースはあるの?」という疑問を解決すべく、リースバック後の賃貸期間について7年間の実務経験を持つ元営業担当(FP1級)が詳しく解説します。
リースバック後はずっと住めるの?何年住めるのかを知りたい
- リースバック後に長く住み続けるための方法
- 普通借家契約と定期借家契約の違い
- リースバック契約時の賃貸関係の注意点
なお、リースバックについての基本知識等の詳細解説と大手リースバック会社の比較は以下の記事も合わせてご覧下さい。
穴吹興産 竹島 健
区分投資事業部 企画系(バックオフィス)課長
【資格】
・宅地建物取引主任者
・1級ファイナンシャル・プランニング技能士
【経歴】営業マンとして新築マンションで12年、その後7年間リースバックを中心に中古マンション買取事業に従事。優秀営業マン賞等受賞。現在は経験を活かしてリースバック検討に役立つ情報を発信。
リースバックの取材に関する窓口はこちら:stock_mansion@anabuki-kosan.co.jp
【結論】リースバック後は何年住めるか
リースバックで住める期間は2年~3年
まずは、リースバックで何年住めるかの結論です。
リースバックで住める期間は2年~3年程度となることが一般的です。理由は、リースバックは住める期間が比較的短期となる定期借家契約を採用されていることが多いためです。
一方、普通借家契約であれば住める期間に期限がないため5年・10年以上といった長期の期間で住み続けることもできます。
つまり、何年住めるかは賃貸借契約の種類で異なり、長く住み続づけるためには「普通賃貸借契約」で契約することが答えとなります。
賃貸借契約には2種類あるんですね。
それぞれの賃貸借契約の詳細は後ほど詳しく解説します
リースバックはどんな仕組み?
リースバックは、自宅を売却した後も賃貸として住み続けられる、不動産売買と賃貸借契約がセットになったサービスです。
リースバックでは家を売却するための「売買契約」と、売却した家を賃貸として借りるための「賃貸借契約」の2つの契約を同時に勧めることにになります。
具体的な手続きの流れは以下の通りです。
自宅をの売買契約を締結します。この時点では賃貸借契約の内容も確認して手続きを進めて行きます。
売買決済と同日で賃貸借契約が始まり家賃が発生します。
毎月家賃を支払い続けることで、今の自宅に住み続けることが可能になります。
契約の内容によっては、将来的に売却した家を買い戻すことも可能です。
買い戻しの取り扱いはリースバック会社ごとに異なりますが、「再売買の予約契約」や「買戻し特約」などの契約を交わすケースもあります。
リースバックで何年住めるかは賃貸借契約の種類で異なる
リースバックの賃貸借契約は、「普通借家契約」または「定期借家契約」のいずれかになります。
どちらを選ぶかで、リースバック後に住める期間が変わってくるため、契約の際は注意が必要です。
それでは、普通借家契約と定期借家契約の違いを見ていきましょう。
普通借家契約とは
普通借家契約は、マンションなどの賃貸物件を借りる際によく用いられる一般的な賃貸借契約です。
借主の権利が強く守られていることが特徴で、借主が希望すれば契約を更新し続けることができます。
一方、貸主が更新を拒否するには、退去に値するような正当な事由(家賃の滞納等)が必要になります。基本的に、貸主の都合による契約の解除は認められません。
つまり、普通借家契約では、きちんと家賃を払い続けている限り、何年でも住めるということになります。借主の意思で賃貸契約の期間を延長できるので、リースバック後も長く住み続けたい場合に最適です。
リースバックでは多くの方が普通借家契約を選んでいます。
あなぶき興産では独自にリースバック検討者の市場調査を行っています。詳しくは以下の記事をご覧ください
定期借家契約とは
定期借家契約は、あらかじめ契約期間が定められた賃貸借契約です。
更新がなく、契約期間が満了すると賃貸借契約が終了します。例えば、3年契約の定期借家契約を結んだ場合、3年経過した時点で退去しなければなりません。
もし、契約期間満了後も住み続けたい場合は、再契約を結ぶという方法があります。
再契約には、貸主の承諾が必要です。
ここでいう再契約とは、引き続き住むために新しい契約を結び直すことを意味します。更新とは異なるため、家賃が値上がりするなど契約内容が変更される可能性もあります。
普通借家契約と定期借家契約の大きな違いは、更新の可否です。普通借家契約は借主の意思で賃貸契約を更新できますが、定期借家契約には更新がありません。
引き続き住むためには、貸主に再契約を承諾してもらう必要があります。
普通賃貸借契約は基本的に借主に有利な契約なのですね
借地借家法という法律で賃借人の「住みつづける」権利が守られています
リースバック後の賃貸期間は何年?
リースバックした家に何年住めるかは、賃貸借契約次第になります。
普通借家契約でも賃貸期間(主に2年)はありますが、借主の意思で更新できるので、基本的には希望する限りいつまでも住み続けることができます。
一方、定期借家契約の場合は、再契約ができない可能性を考慮する必要があります。
普通借家契約の場合
普通借家契約であれば、リースバックした家に長期的な居住が可能です。
最初の契約期間(1年・2年等)は契約によって異なりますが、賃貸契約を更新するかどうかの決定権が借主にあるので、特段の事情がない限り、半永久的に住み続けることもできます。
例えば、10年や20年、あるいはそれ以上の期間、リースバックした家に住めるケースもあるでしょう。
「住み慣れた家でずっと暮らしたい」という方はもちろん、「リースバックした家にいつまで住むか決まっていない」という方にも、普通借家契約はおすすめです。
定期借家契約の場合
リースバックにおける定期借家契約では、契約期間を2~3年に設定するケースが多くなっています。
定期借家契約には基本的に更新がないため、再契約ができない場合、住める期間は契約期間である2~3年ということになります。
交渉次第で5年や10年といった契約を結ぶことも可能ですが、どちらにせよ住める期間が限られた契約になるため、リースバックした家に長く住み続けたい方には不向きといえます。
定期借家契約は、居住期間が明確な場合に適した契約形態であり、「半年後に引越しの予定がある」「子どもが卒業するまで今の家に住みたい」というような将来が確定している場合におすすめです。
以上を踏まえて、普通借家契約と定期借家契約の特徴をまとめると次のようになります。
普通借家契約:特段の事情がなければ、リースバックした家に住み続けられる
定期借家契約:事前に定めた契約期間の居住となる(一般的には2~3年)、再契約で延長が可能
なお、リースバックの賃貸借契約は、定期借家契約であることが一般的です。
普通借家契約を希望する場合、つまりリースバック後も今の家に長く住み続けたい場合は、普通借家契約に対応しているリースバック会社を選ぶ必要があります。
「あなぶきのリースバック」は長期で住める普通借家契約が基本の商品です
期間満了前に退去を申し渡されるケース
リースバックした家に何年住めるかは、契約次第であることをお伝えしました。
ですが、場合によっては、契約期間が満了する前に退去を求められるケースがあります。具体的な事例を見ていきましょう。
家賃の滞納や不法行為
長期にわたる家賃の滞納や、近隣住人の迷惑となる不法行為は、大きな問題となります。
改善されなければ、退去に値する正当な事由とみなされ、賃貸契約を解除されてしまいます。
一般的に、家賃滞納から契約解除までの期間は、3ヵ月前後であることが多いです。
契約解除通知が出されると退去しなければならないため、家賃の支払いが苦しいと感じたら、早めに対策をとる必要があります。
1カ月の滞納でも賃貸契約解除となることもありますか?
1カ月程度の家賃滞納では賃貸契約解除の正当事由と見なされないことが一般的な解釈となっています
リースバック事業者の経営難
定期借家契約でリースバックを行っていた場合、リースバック会社の経営難や倒産に伴い第三者に所有権が渡った際に、賃貸契約期間の満了で退去を求められる可能性が高まります。
普通借家契約であれば、所有者が誰に移ったとしても賃借人の住み続ける権利が守られるため、基本的に退去を求められることはありません。
このような事態を防ぐためには、経営基盤が安定し実績のある大手のリースバック会社を選ぶことが有効です。安定した大手リースバック会社であれば経営悪化や倒産のリスクが少ないと考えられるからです。
しかし、何より重要なことは所有者が将来誰に移ったとしても、賃借人としての権利を主張し続けられる普通賃貸借契約となっているかどうかです。
倒産のリスクが少ない大手リースバック会社であったとしても、経営方針でリースバック後に物件を転売することは珍しいことではないからです。
賃貸中の物件はオーナーチェンジ物件と呼ばれ、投資商品として市場で売買されています。
リースバック会社が所有者であり続ける訳ではないんですね。でも、急に所有者が変更となるとびっくりしそうです
将来、所有者が変更となる可能性がある前提で賃貸借契約をしっかり確認しましょう。特に契約書に明記していない内容は注意が必要です
契約書上の賃貸期間の延長は可能?
リースバックの賃貸借契約には、普通借家契約と定期借家契約がありますが、居住可能期間を延長することはできるのでしょうか。
普通借家契約と定期借家契約、それぞれのパターンを紹介していきます。
普通借家契約なら無条件で延長が可能
前述した通り、普通借家契約は借主の意思で賃貸契約を更新できる契約となります。
そのため、借主が希望する限り、居住期間を延長することが可能です。
一般的に、普通借家契約の契約期間は、1年以上、2年単位などで設定されます。例えば、2年契約の普通借家契約を結んだ場合、2年ごとに契約の更新を繰り返しながら、継続して住み続けることができます。
普通借家契約の大きなメリットは、リースバックした家に何年でも住めることです。貸主は正当な事由がない限り、更新の申し出を拒否することができません。
賃貸借契約更新時の更新料は必要でしょうか
更新料の有無については会社が地域の商慣習によってもことなるため、事業者に確認が必要です
定期借家契約は再契約による延長が可能
定期借家契約には更新がないため、契約書に定められた期間で契約が終了します。
例えば、3年契約の定期借家契約を結んだ場合、3年後の契約満了時に退去しなければなりません。原則として、居住可能期間の延長は不可となります。
ただし、定期借家契約でも、賃貸契約を延長できる方法はあります。
貸主と借主が合意すれば、再契約を交わして居住可能期間を延長することが可能です。再契約を前提とした定期借家契約を行うリースバック会社も多く存在します。
定期借家契約の再契約では、これまでの契約の更新ではなく、新しく契約を結び直すことになります。
そのため、再契約時には家賃の値上がりや契約期間の変更が生じるケースもあります。家賃が家計を圧迫するなど金銭的な負担が大きくなる場合は、再契約を慎重に検討することが必要です。
定期賃貸借契約のメリットは、賃貸期間が最初から決まっている代わりに、普通賃貸借契約と比べて売買金額・家賃設定が好条件となりやすい点です。
定期賃貸借契約で再契約を前提としている会社の場合でも契約書上で、具体的な内容を明記することが大切です
長く住み続けるために契約時に注意すること
どのような契約を結ぶかで、今の家に住める期間が変わってきます。リースバックの契約時には次のようなポイントに注意しましょう。
リースバック業者にありのままの希望を相談する
リースバック会社の担当者には、住宅に関する悩みやありのままの希望を伝えるようにしましょう。
例えば、「住宅ローンの支払いが苦しい」「自宅の査定価格がもっと高いと思っていた」などの内容は少々言いづらいものですが、相談してみると自分に合った提案やアドバイスがもらえる可能性があります。
なお、リースバックした家に長く住みたい場合は、普通賃貸借契約もしくは長期の定期賃貸借契約を結ぶ必要があります。
リースバック後、長期的な居住を希望する旨を伝え、普通借家契約が可能かなどを確認することも重要です。
契約内容をしっかり確認する
リースバックの契約を結ぶ際は、契約内容をよく確認することが大切です。
賃貸借契約の種類をはじめ、契約期間、更新の有無、月々の賃料、中途解約の条件などは、特に重要なポイントになります。
契約書の隅々まで目を通し、何か不明な点がある場合は必ずその理由を尋ね、確認を行ってください。
リースバックは資産とお金が動く大きな契約なので、慎重に進める必要があります。すべてに納得した上で契約を結ぶようにしましょう。
買戻しも視野に入れる
少しハードルは高くなりますが、確実に長く住み続けたい場合は、自宅の買戻しも視野に入れるといいでしょう。
買戻しが可能な契約であれば、将来、家を再購入して所有権を取り戻すことができます。
買戻しにはまとまった資金が必要になりますが、買戻しをすれば自宅は再度自分の所有物となり、家賃を支払わずに住み続けられます。
家の買戻しを希望する場合は、買戻しに関連する条件を契約書に記載してもらいましょう。将来、買い戻しをする際の条件面でのトラブル防止に役立ちます。
買戻しをするかどうか分からない場合でも、買戻しについて契約書に明記した方がよいのでしょうか
買戻しの有無によって賃料や売買金額も異なる場合があるため、本当に必要な場合のみ契約書に明記することがおすすめです
買戻しにも可能期間がある
買戻しの取り扱いは、リースバック会社によって異なります。
いつでも買戻しが可能なケースや買戻しの期間が限られているケース、契約時に予め金額が設定されているケースなど様々です。
リースバック会社を比較検討する際は、買戻しについての確認も行うようにしましょう。
将来、買戻しを希望する場合は、普通借家契約でのリースバックの利用がおすすめです。
買戻しの期限はあるものの普通借家契約であれば賃貸契約を更新しながら、買戻し金額・買戻し期限を決めた上で買戻しを狙うことができます。
定期借家契約でも買戻しは可能ですが、買戻しが実現しなかった場合には期間満了で退去となる必要があります。
普通借家契約かつ買戻しが可能な契約であれば、将来、家を買い戻せる可能性が高くなると考えられます。家の買戻しを希望するのであれば、普通借家契約のリースバックを検討するといいでしょう。
買戻しにはなぜ期限があるのでしょうか
買戻しの期限がない場合いつでも契約書上の金額で買い戻される可能性があるため、事業者による転売が難しくなるからです
長期で住むことを前提としたリースバックの例
リースバックした家に長く住み続けるためには、以下の方法が挙げられます。
1. 普通借家契約が可能なリースバック会社を選ぶ
2. 再契約を前提とした定期借家契約を行うリースバック会社を選ぶ
3. リースバック期間中に家の買戻しをする
それぞれの方法を具体的に見ていきましょう。
1. 普通借家契約が可能なリースバック会社を選ぶ
リースバックした家に長期間住み続けたいのであれば、普通借家契約に対応しているリースバック会社を選ぶと安心です。
一旦、普通借家契約を交わせば、基本的に借主の意思だけで契約の更新が可能になります。家賃滞納などの問題を起こさない限り、いつまでも住み続けることができます。
リースバックを取り扱う会社は多く存在しますが、賃貸借契約の内容は会社ごとに異なります。
リースバック会社選びでは、どのような賃貸借契約が可能か確認することも重要です。
再契約を前提とした定期借家契約を行うリースバック会社を選ぶ
リースバック後に長期で住み続ける場合は普通賃貸借契約で対応の会社を選ぶことが最適ですが、リースバック会社の中には、再契約を前提とした定期借家契約を行う会社も存在します。
定期借家契約では貸主に再契約を確約させることは難しいですが、再契約の実績が豊富なリースバック会社は再契約に関して契約書に明記する等して対応しており、ある程度信頼できると考えられます。
定期借家契約を選択すると、再契約できないリスクを抱えることになります。そのリースバック会社が信頼できるかどうか、しっかりと見極めた上で契約を行うことが大切です。
契約書を確認し再契約が借主の意思で行えることに確信が持てない場合は、トラブル回避のためにも普通賃貸借契約の会社を選ぶことが無難です
確実に再契約が可能であれば定期賃貸借契約でなくても良い気がします
3. リースバック期間中に家の買戻しをする
家の買戻しをすれば、所有権が戻り、リースバックした家は再び自分のものになります。「自宅」として、自由に気兼ねなく生活していくことができます。
家の買戻しには多くの資金を用意する必要がありますが、買戻しをした後は、家賃を支払う必要がありません。リースバック会社との賃貸借契約も終了します。
普通借家契約のリースバックなら永住も可能
リースバック後、何年住めるかは賃貸借契約の内容次第になります。
普通借家契約であれば借主の意思で契約を更新できるので、いつまでも長く住み続けることができます。
家賃を滞納するなどの問題を起こさなければ、老後の終の棲家として永住することも可能です。
リースバックを検討するにあたり、「愛着のある今の家にできるだけ長く住みたい」と考えている方は多いと想像できます。そのような方には、途中で契約を解除されるリスクが少ない普通借家契約でのリースバックがおすすめです。