リースバック利用したうえで「生活保護」は受けられる? 具体的な要件やケースごとの違いを解説

パソコンを見る夫婦

リースバックを利用すると生活保護を受けられないのでは? と不安な方に向けて、具体的な要件やケースごとの違いについて解説します。

リースバックとは自宅を売却後、賃貸契約を結んで住み続ける資金調達の手段です。生活困窮などさまざまな目的で利用されています。

しかし、生活保護を申請するうえで気になるのが、持ち家を所有しているとどうなるのかということです。生活保護の受給要件は市区町村ごとに異なり、持ち家についての要件もそれぞれ異なります。

この記事では、生活保護制度の概要と、リースバックを利用したうえで「生活保護」が受けられるのか、具体的な要件やケースごとの違いについて解説します。

リースバックを検討されている方や、安定した老後を送りたい方はぜひ参考になさってください。

なお、リースバックについての基本知識等の詳細解説と大手リースバック会社の比較は以下の記事も合わせてご覧下さい。

記事執筆・監修
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穴吹興産 竹島 健

区分投資事業部 企画系(バックオフィス)課長

【資格】
・宅地建物取引主任者
1級ファイナンシャル・プランニング技能士

【経歴】営業マンとして新築マンションで12年、その後7年間リースバックを中心に中古マンション買取事業に従事。優秀営業マン賞等受賞。現在は経験を活かしてリースバック検討に役立つ情報を発信。

リースバックの取材に関する窓口はこちらstock_mansion@anabuki-kosan.co.jp

目次

「生活保護」の概要や要件を理解しておこう

生活保護申請書

生活保護制度のこまかな要件は、市区町村によって異なります。まずはどのような制度を指すのか、生活保護制度の概要や要件について解説します。

「生活に困窮」している人の自立を助けるための制度

生活保護(生活保護制度)とは、経済的に苦しい生活を送っている人々が最低限の生活を維持できるように支援することを目的とした制度です。

失業や病気、障がいなどさまざまな理由で基本的な生活を送れない人々に対して、最低限度の生活を保障するために経済的な支援により自立を促します。

お住まいの市区町村にある福祉事務所や町村役場の生活保護担当で相談や申請の手続きをすることが可能です。

「収入が最低生活費に満たない場合」に一定額が支給される

生活保護の受給資格は、収入が最低生活費(生活保護基準)を下回る場合に限られます。最低生活費とは食費や住宅費、衣類費など生活に必要な基本的な費用が含まれており、お住まいの地域の等級や対象者の年齢に応じて決められています。

もし、収入が最低生活費を下回る場合、差額分が保護費として毎月支給されます。家賃が無料になるわけではありません。

預金や不動産などの財産があると、基本的に受けられない

生活保護を受けるには、申請者の資産などを調査したうえで判断されます。預金や不動産などで一定額以上の資産があるときは、その資産を先に利用しなければなりません。

この理由は、生活における困窮度が高い人を優先するためです。所有している資産が生活保護の受給資格に影響を受けることがあることを覚えておきましょう。

世帯単位でみて、保護要件に合致するかが重要

生活保護は個人ではなく、世帯単位でおこなわれます。申請後に調査される内容は以下の通りです。

・家庭訪問などによる生活状況の把握
・預貯金や保険、不動産などの資産
・扶養義務者へ扶養の可否
・年金や手当、収入など
・働けるかどうか

こうした世帯員全員の収入や資産が評価され、全体で最低生活費を下回るときのみ保護の対象となります。そのため、同居する家族の収入も含めて生活保護の申請が認められるかどうか検討しなければなりません。

援助が可能な家族・親族がいる場合は保護対象外

生活保護は、国民生活を保障する最後の手段として位置づけられています。そのため、経済的な援助を提供できる近親者がいる場合、近親者からの援助を受けることが前提です。

申請者の3親等以内の家族が対象となります。親等とは血縁関係や法律上血族となった親族を指しており、3親等以内の家族や親族に経済的余裕がある場合、その人々からの支援を求めることが要求されます。援助が可能な親族がいるときは保護の対象から外れることを覚えておきましょう。

「持ち家」がある時点で、生活保護は対象外?

老夫婦と家のモチーフ

生活保護を受けるにあたって、持ち家の有無による影響は市区町村で異なります。具体的にどのような影響があるのか、想定される3つのパターンについて解説します。

「生活に利用されていない土地・家屋等」は原則、売却することが求められる

生活保護の申請時、申請者が生活のために直接使用していない土地や家屋(たとえば、賃貸している物件や休耕地など)を所有している場合、これらは任意の売却が要求されます。

これらの資産は、生活を支える直接的な手段とはみなされません。まずはこれらの資産を売却して、その収入を生活資金として使用することが原則とされています。

申請者が最低限の生活を営むための経済的な支援を受ける前に、自己資産の活用を促すのです。

「豪邸を所有している」場合は問題外

豪邸などの高価な住宅を所有していると、生活保護の受給資格が問われることになります。

生活保護制度はあくまで最低限の生活を保障するための制度です。

住宅を維持するにはさまざまな費用がかかるため、豪邸となると通常よりも多額の維持費用がかかることが想定されます。

生活保護は豪華な住環境を維持するための支援制度ではありません。

豪邸を所有している場合は、まず豪邸を売却して、より控えめな住環境に移ることが求められます。生活保護はあらゆるものを活用したうえで、最後の手段として申請を検討してください。

持ち家がある状態で生活保護を受給している人もいる

持ち家があると生活保護を必ずしも受けられないというわけではありません。

自宅に住み続けながら生活保護を受給しているケースは存在します。

これは、その家屋が申請者の生活に欠かせないものであり、その家屋を維持することで経済的な困窮を招かない場合に限られます。

たとえば、古くから住んでいる家で現在の市場価値が低い、または売却しても生活資金にならないときなどです。

こうした状況なら、自宅に住み続けながら生活保護を受けることができます。

「リースバック」の概要

不動産取引をする老夫婦

「生活の事情で引っ越しができない」「住み慣れた住宅に住み続けたい」といった理由で自宅の売却は選択肢にない方に向けて「リースバック」というサービスをご紹介しましょう。

まずは、リースバックの大きな2つの特徴について解説します。

自宅を一括売却するが、そのまま賃貸で住み続けられる

リースバックの魅力は、自宅を一括売却後、同時に売却した住宅の賃貸契約を結んで、住み続けられる点です。

これにより、資金を一時的に得られるため、引っ越しをせずに住み慣れた環境に留まることができます。

リースバックは、経済的な理由や健康上の問題、住み慣れた地域から離れたくないなど、さまざまな理由で引っ越しを避けたい人々にとってとくにメリットのある不動産取引方法のひとつです。

住宅ローンがある場合は原則、売却資金でローン完済することが条件となる

リースバックを利用するときに、住宅ローンの残債があるときは原則として、売却資金で住宅ローンを完済しなければなりません。

これは生活保護を申請する際の条件でもあり、新しい賃貸契約の開始をスムーズに進めるために必要です。

住宅は築年数などの影響により売却価格が変動します。そのため、住宅ローン残高よりも売却価格が下回るケースも考えられます。

住宅ローン残高よりもリースバックによる売却価格が低い場合には、自宅売却だけでは抵当権を抹消することが出来ない為、別途で抵当権を抹消するための現金を用意する必要があります。

自宅売却に加えて現金を支払ってまでリースバックで今の自宅に住み続けることが良いかどうかは、人によって判断が異なります。

どちらがメリットがあるのかしっかり検討しなければなりません。

リースバックを利用している状態では生活保護を受けられる?

座る高齢者

リースバックを利用していたら、必ずしも生活保護が受けられないわけではありません。

状況によっては、受けられる場合もあります。どのような事例があるのか解説します。

リースバック利用後、手元に資金が残っている場合は受けられない

リースバックで自宅を売却した後、住宅ローン完済しても売却資金が一定額以上あるときは生活保護が受けられない可能性があります。

生活保護制度は、生活保障の最後の手段のため、自己資産を先に使うことが前提とされているため、リースバック後に手元にある程度資金があるならそれを先に使わなければなりません。

売却価格によっては生活保護の受給資格に大きく影響することを覚えておきましょう。

リースバック利用後に、多額の借金が残ってしまう場合も注意

リースバックで自宅を売却しても、たとえばその売却資金を元手に何かの事業を始めたり、その他の理由ですぐに使い切ってしまったりして結果的に新たな借金がある状態になってしまうと、生活保護の受給資格に影響する可能性があります。

生活保護は基本的に、日常生活を支えるための最低限の費用に充てられるべきであり、借金返済のために使われることは本来の目的ではありません。

新たな借金の返済に充てられるときは、制度の目的に反する不適切な行為と判断されてしまいます。

生活保護には「賃料の上限」がある

リースバック後に住み続ける場合、毎月支払う家賃は生活保護受給時の住宅扶助の範囲に収めなければなりません。

住宅扶助とは、生活保護制度のなかで定められているさまざまな保護のうち、家賃の扶助、家屋の補修費用の扶助といった、被保護者にとって最低限の「住める場所」を維持するためという目的で給付されるお金です。

各都道府県ごとに住宅扶助についての基準額が定められており、この金額以上の賃料や補修費がかかるような住宅に住んでいる(住めている)状況では、基本的に生活保護の対象から外れてしまうということになります。

埼玉県の住宅扶助基準額をくらべてみましょう。

級地区分地区町村1人2人3~5人6人7人以上
級地区分地区町村1人2人3~5人6人7人以上
1級地-1さいたま市・川口市 47,70057,00062,00067,00074,400
2級地-1 所沢市、蕨市、戸田市など43,00052,00056,00060,00067,000
3級地-1行田市、秩父市、飯能市など37,00044,00048,00052,000 58,000
3級地-2 滑川町、川島町、吉見町など


※ 出典:埼玉県「住宅扶助基準額(生活保護法)」

このように賃料が住宅扶助基準額以下でなければなりません。例えばさいたま市で夫婦2人暮らしなら、賃料57,000円以下ということです。

住宅扶助は居住地や世帯員数に応じて上限が設けられているため、リースバック後の賃料が生活保護の要件を満たすのかの確認が必要です。

もし賃料が高すぎて要件を満たさないときは、生活保護対象から外れて自己負担となります。

リースバック利用中に生活保護を受けたい場合の注意点

窓口で相談をする老夫婦

リースバック利用中に生活保護を受けるには、市区町村ごとの要件の違いを把握し、以降の生活を見据えたうえで申請することが大切です。

リースバック利用中に生活保護をスムーズに申請するためにも、知っていてほしい注意点を紹介します。

まずは市区町村ごとの生活保護要件をしっかり確認しておく

生活保護の要件は市区町村で異なるため、お住まいの市区町村で定められている具体的な要件と申請方法をしっかりと理解しておくことが大切です。

市区町村のホームページでも情報を収集できるのでチェックしてみましょう。

把握すべき内容は収入や資産の基準、家賃の上限、その他申請に必要な書類や手続きなどがあります。

事前に適切な準備と情報収集をおこなっておくことで、スムーズに手続きを進めることが可能です。

賃貸居住を続け、資金が枯渇し始めたら生活保護を申請してみる

リースバックで自宅を売却したあとに、手元に一定額以上の資金が残るときは生活保護の申請はできません。

売却資金を住宅ローンの返済や日常生活費に充てた後、経済的に困窮する状況になってから、生活保護を申請するという選択肢もあります。

申請前に、自己の資金状況と市区町村の生活保護要件を照らし合わせて確認しておきましょう。

賃料を低く抑えられるリースバックを選んでおく

生活保護を受給している間も賃貸で住み続ける場合、毎月支払う賃料は生活費のなかでも大きな額を占めるため、よく検討しなければなりません。

賃料によっては、生活保護を受ける基準を満たせない可能性があります。

住宅扶助を受けることを希望されているなら、可能な限り賃料を低く抑えられるリースバックを選びましょう。

信頼のおけるリースバック業者を選ぶことができれば、生活保護の住宅扶助を受けながら自宅に住み続けることが可能となります。

ただし、さまざまなリースバック業者もいるため、利用するメリットだけではなく、デメリットも理解したうえで検討することが大切です。

住み慣れた地域で経済的な安定を得ながら暮らすために、生活保護の申請を検討しているなかでリースバックを選ぶなら、家賃の条件も含めて契約内容を慎重に検討してください。

生活保護以外の選択肢も検討しておこう

老夫婦のひらめき

リースバックを利用している方や、利用を検討している人々は、生活保護以外の選択肢についても知っておくことが大切です。ここでは生活保護以外の支援制度など選択肢をいくつか紹介します。

生活福祉資金や障害年金など他の支援制度も検討してみる

生活福祉資金貸付制度は、低所得者や福祉の必要性がある家庭に対して、生活資金や住宅資金の貸付を行っている制度です。

生活保護と違って返済が必要な制度ですが、条件によっては低金利で借入れができるため、経済的に困窮しているときの一時的な支援として利用できます。

障害年金は、病気やけがなどの事情があり生活や仕事が制限された人が、経済的に自立するための支援を目的とした制度です。

病気やけがの程度や厚生年金の加入条件によって支給額が異なります。もし、障がい基礎年金または障がい厚生年金(1級・2級に限る)を受けられる人は、国民年金保険料の免除を受けることが可能です。

これらの制度は、特定の条件や要件を満たす必要があります。

しかし、生活保護の申請を検討する前や、リースバックを利用してもなお経済的に厳しい状況にあるときは活用を検討しましょう。

理想は「リースバック利用によって生活の困窮がなくなる」こと

リースバックは、自宅を売却しつつも住み続けられるという点がメリットです。

この取引によって、一時的に得た大きな資金を利用して、経済的な困窮を解消することが理想的なシナリオでしょう。

リースバックから得られる資金を効果的に管理し、住宅ローンの返済や将来の賃料などの生活費に充てることで、長期的な経済的安定を目指せます。

将来を見据えた相談ができるリースバック業者を選ぶことも大切です。

生活保護×リースバックの組み合わせを検討する場合はプロに相談することが大切

リースバックを利用しても生活保護を受けられる可能性はあります。

ただし、売却後に毎月支払う賃料が、お住まいの市区町村で定められた住宅扶助以下であることが大切です。

こうした将来設計も含めて、生活保護の受給とリースバックの組み合わせを検討されているなら、将来設計をふまえてプロに相談してみましょう。

リースバックは不動産取引のため、信頼のおける事業者を選ぶことが大切です。

売却後の家賃が扶助の基準額以下となるのか、現状の売却金額を査定してもらうこともできます。長く住み続けるためにも、良い方法を選びたい方はぜひプロへご相談ください。

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