「持ち家を現金化しつつ住み続ける」リースバックについて、様々な疑問を一挙解決

家の模型とハテナマーク

持ち家を不動産業者などに売却して、そのまま同じ家に家賃を払いながら住めるリースバックの認知度が徐々に高まっています。

ただ、リースバックの仕組みにはパッと見で理解しづらい部分もあることから、利用検討しているものの疑問が次から次へと出てきて、躊躇しているという方もいらっしゃるかもしれません。

そこで本記事では、リースバックの仕組みの特性上、疑問となりやすい事項をすべて解説します。

なお、リースバックについての基本知識等の詳細解説と大手リースバック会社の比較は以下の記事も合わせてご覧下さい。

記事執筆・監修
著者紹介 プロフィール写真

穴吹興産 竹島 健

区分投資事業部 企画系(バックオフィス)課長

【資格】
・宅地建物取引主任者
1級ファイナンシャル・プランニング技能士

【経歴】営業マンとして新築マンションで12年、その後7年間リースバックを中心に中古マンション買取事業に従事。優秀営業マン賞等受賞。現在は経験を活かしてリースバック検討に役立つ情報を発信。

リースバックの取材に関する窓口はこちらstock_mansion@anabuki-kosan.co.jp

目次

リースバックを利用すると「持ち家」ではなくなる?

間取り図と「RENT」の文字

リースバックとは、持ち家を不動産業者などに売却して、そのまま同じ家に賃貸料を支払いながら住み続けるサービスを指します。持ち家を売却した代金は一括で支払われるため、資金調達の方法として幅広く活用されています。

リースバックを利用する上で知っておきたい基本的なポイントをご紹介します。

不動産を「売却」することになるため、持ち家ではなくなる

リースバックは、所有している不動産を売却することになるため、その不動産は第三者のものになり、持ち家ではなくなります。

つまり土地や建物の所有権や名義がリースバック契約を交わした企業のものになるのです。

そのため、より大きな資金が必要になった時に不動産を担保にお金を借りることなどはできなくなる点に留意しておきましょう。

さらにリースバックで大きな資金を得られても、売却すると持ち家でなくなるため、毎月家賃を支払わなくてはなりません。家賃の設定額は物件や業種によって異なります。毎月の家賃が家計の負担にならないかをよく検討してみましょう。

また、リースバックの場合、単に不動産を売却する時よりも売却価格が低くなる傾向にあります。リースバックを取り扱う事業者は、利回りを考慮して持ち家の価値を査定します。

事業者側は、持ち家の買取価格と賃貸物件になった後の家賃収入などの利益や不動産の市場価値が下落した場合のリスクなども踏まえて計算するのです。売却価格が比較的高い場合でも、毎月の賃料が高くなるケースもあるので注意が必要です。

一般的にリースバックの年間家賃は売却価格の10分の1前後といわれています。持ち家を1,200万円で売却した場合の毎月の家賃の目安は、10万円前後です。但し、この金額はあくまで目安でリースバック会社によって家賃設定額は様々です。

その他、リースバックには多くのメリットがあります。リースバックによって持ち家ではなくなるものの、それまでにかかっていた固定資産税が不要になります。

また、火災保険など住居に必要な保険も持ち家の時よりも割安になり、負担が軽くなります。所有権が第三者になっているため、相続税の対象にもなりません。持ち家にかかる税金や経費を大幅に軽減できるのです。

持ち家じゃなくなっても、長期間好きなだけ住み続けられる?

リースバックを利用して持ち家ではなくなった場合、必ずしもその家に長期間住めるわけではありません。リースバックを利用する際の契約内容によって住める期間が異なるためです。

リースバックでは持ち家を売却する「売買契約」と同時に、その物件に賃貸物件として住み続けるための「賃貸借契約」を結びます。

後者の「賃貸借契約」には「普通借家契約」と「定期借家契約」の2種類があり、契約内容によって住み続けられる期間が異なります。

「普通借家契約」は、リースバックに限らない一般的な賃貸契約と同じように賃貸契約を結び、契約期間(2~3年)が過ぎると更新することで、そのまま同じ物件に住み続けられます。更新するかどうかの意思決定は入居者ができ、物件のオーナーは正当な理由がない限り更新を拒否できません。

「定期借家契約」は、文字通り期間を決めて結ぶ賃貸契約です。一般的に2~5年の期間が設定されています。「普通借家契約」と異なる点は、契約期間が過ぎると更新ではなく、再契約が必要という点です。事業者によっては再契約できない場合があるため、注意しましょう。

リースバックを利用して持ち家ではなくなっても、長く同じ家に住み続けたい人が大半ではないでしょうか。

これまで持ち家だった家に長く住み続けたい人は「普通借家契約」を結べる事業者と契約するか、「定期借家契約」でも何年後かに再契約に応じてくれる契約を結んでおくと良いでしょう。

持ち家ではなくなるものの、売却の事実は周囲に知られにくい

リースバックで持ち家から賃貸に変わっても、売却の事実をご近所などの周囲には知られにくいという点は大きなメリットです。

引っ越しの必要はなく、不動産業者は契約者がそのまま住み続けることを前提にしているため、目立った販売活動もおこないません。

ただし、売却した物件がマンションの場合、マンションの理事会経由で知られるなどはあります。マンションの所有者で構成されている管理組合には、売却後は参加できないこともあります。

リースバック利用後、将来的に「買戻し」して再び持ち家にできる?

話し合うシニア夫婦

リースバックを利用して持ち家を売却して賃貸物件として住み続けられても、将来的に資産として持ち家を保有しておきたい人もいるでしょう。リースバック利用後、家を買い戻して再び持ち家にできるのかを解説します。

「再売買の予約」や「買戻し特約」を付けられる場合がある

多額の資金が必要になり、一旦は持ち家を手放したものの、将来、経済的に余裕ができた際に買戻したい場合、リースバック契約時に「再売買の予約」や「買戻し特約」などを付けておきましょう。

「再売買の予約」はリースバック契約を締結した事業者との間で、将来的に買戻し(再売買)の予約をおこなうものです。予約は期間内であればどのタイミングでもおこなえるのが特徴です。

買戻す期間やその他の条件も比較的自由に決められるため、買戻す時期が明確でない人におすすめです。

「買戻し特約」はリースバックの売買契約と同時に結ぶ契約で、売却額と同等の金額を支払うことで、物件の買戻しができます。

「再売買の予約」よりも法的な拘束力が強い反面、契約時に決めた期間内に必ず買い戻さなくてはなりません。期間は最長で10年で、特約に期限が明記されていない場合は5年で買戻す必要があります。

将来的に買戻しを希望する場合は、契約時に「再売買の予約」や「買戻し特約」の有無や契約内容をよく確認しておきましょう。

買戻しは必ずしもメリットではないため、買戻しを前提としないリースバックサービスもある

リースバック契約をした物件を買戻すのは、必ずしもメリットではありません。再び持ち家が手に入る一方で、買戻しにかかる費用は売却時よりも割高になるためです。

物件の状態や事業者によって異なりますが、一般的に持ち家の売却価格に10~30%上乗せした金額が相場です。持ち家を2,000万円で売却した場合、買戻しには200万~600万円上乗せした金額が必要になります。

また、住宅ローンや家賃を滞納している場合、再び住宅ローンが組めない可能性が高いです。

例えば、住宅ローンの滞納が続き、「差押え通知」や「競売開始決定通知」などが届いた場合、裁判所が強制的に持ち家を売却する競売にまでいたることがあります。

しかし競売をおこなうまでの間に第三者のサポートを得て、競売で売却するよりもより良い条件で売却できる任意売却であれば、その後の選択肢としてリースバックも検討できます。

しかし、任意売却まで進んでしまうと確実に信用情報機関に一定期間記録が残ってしまうため、住宅ローンは組めません。

こうしたことも踏まえて、買戻しを前提としないリースバックサービスが多くあります。

どんな人がリースバックを活用している?

話し合う家族

年々、認知度が増しているリースバックですが、どのような人が利用しているのでしょうか。リースバックの利用に適しているケースを詳しくご紹介します。

「住み続けたい&おおきな資金を得たい」をかなえる

リースバックのメリットとして挙げられるのが、住み慣れた家に住み続けられること、一括で大きな資金が手に入ることです。具体的には次のような人がリースバックを利用しています。

・リストラなどで収入が減ってしまった
・自身や家族の医療費の負担が増えた
・老後資金を早いうちから確保しておきたい
・住宅ローンを完済したい
・子供や孫の学費など大きな出費がひかえている
・事業資金に多額のお金が必要
・相続でもめるのを避けたい

リストラなどで収入が大幅に減ってしまった、医療費の負担が増えた、など家計の状況が変わると、毎月の住宅ローンの支払いもかなりの負担になります。

持ち家を保有していると固定資産税や都市計画税、管理費など何かと出費が多くなります。リースバックを利用すれば、住宅ローンや住居の維持費もかからなくなり、家計の負担が減ります。

さらに持ち家の売却資金が入ってくるので、家計の負担も軽くなるのです。

老後資金の不安は若い世代の人でも感じているものです。公的年金だけでは心もとない家庭では、リースバックによって得た売却益で安定した老後資金として確保しておけます。引っ越しなどで住居を変える費用や手間もかからないため、そのまま残しておくのも良いでしょう。

住宅ローンの支払いは、何十年も続く上に、経済状況によっては支払うのが難しくなります。住宅ローンが残っている状態でも、リースバックを利用できるのが大きな特徴です。リースバックで得た売却資金で住宅ローンを完済できます。

子供や孫の学費を用意する場合、まとまったお金が必要になります。大学進学の場合は数百万単位の大きなお金が必要です。

リースバックではまとめてお金が得られるため、大きな出費のために使う人が多い傾向にあります。自営業者や経営者の場合も同様です。事業拡大や事業存続のために資金を活用できます。

また、持ち家がある場合、その居住者が亡くなってしまった時に相続の問題が発生します。相続権を持つ人が複数いると、トラブルのもとにもなりかねません。

リースバックで持ち家を売却すれば、財産は現金になります。持ち家を誰か一人に相続させるよりも分けやすくトラブルになりにくいといえます。

遠方に住んですでに家庭を築いている子供であれば、両親の家を相続しても、うまく管理するのは難しいでしょう。後々のために、リースバックを活用するのも良い方法です。

リースバックというと高齢者の利用が多い傾向にありますが、若年層にも関心が高まっています。国土交通省から発表された株式会社価値総合研究所による調査「リースバックの現状について」(※1)によると、20歳~60歳以上の年齢別で「興味があり、条件にあえば検討したいと思う」または「現在、実際に利用している」と答えたのは、24歳~34歳が最も多くなっています。リースバックは若い世代の利用者も多いことが分かります。

※1 出典 :【株式会社価値総合研究所】リースバックの現状について

物件売却後の資金使途は自由

リースバック利用時に住宅ローンがまだ残っている場合、持ち家の売却資金をローン完済に充てられます。ローン完済後に、売却資金が余ればお金の使い道に制限はなく自由です。ライフプランに合わせた使い方ができます。

リースバックを利用できる持ち家の条件は?

説明する女性

持ち家を売却した後も賃貸として長く住み続けられるリースバックには、多くのメリットがあります。しかし、すべての持ち家でリースバックが利用できるわけではありません。リースバックに必要な持ち家の条件について解説します。

住宅ローンは完済する必要がある

住宅ローンがまだ残っている持ち家をリースバックで売却するためには、ローンの完済が条件です。リースバック利用時に得られる売却資金で、まずは住宅ローンを完済します。

中には売却資金がローン残高を下回ることもあります。手元に差額を補える貯蓄などの資金があれば完済できますが、ない場合、任意売却をする必要があります。

それでもリースバックを選択する場合は、持ち家の抵当権を持つ金融機関の同意が必要になりますが、残念ながら任意売却でリースバックに応じる金融機関は殆どないのが事実です。

理由はリースバックは不動産会社による買取の一種で通常よりも低い売却金額となるため、金融機関の利益に反するためです。

住宅ローンがまだまだ残っている状態であれば、焦ってリースバック契約をしない方が良いでしょう。ローン残高を把握した上で、リースバックを取り扱う事業者に持ち家の見積もりをしてもらいましょう。

「戸建て」「マンション」などの物件種別ごとの利用可否は事業者ごとに異なる

持ち家と一口にいっても、「戸建て」と「マンション」などがあります。リースバックを利用できるかどうか、条件などは事業者ごとに異なります。

リースバックを検討している人は、所有している物件のリースバックに強い事業者を探すと良いでしょう。

例えば、マンションに居住している場合はマンションにリースバックに強みがある会社を選びましょう。

建物自体に問題がある場合は利用不可

所有している物件の状態によっては、リースバックを利用できないことがあります。具体的には次のような状態が該当します。

・物件に瑕疵がある
・既存不適格物件
・その他、特殊な物件など

瑕疵とは設備などに何らかの欠陥や不具合がある状態を指します。物件自体や設備に不具合・破損や雨漏り、白アリの発生など、住居としての性能が著しく劣る状況がある物件は物理的瑕疵があるとみなされ、リースバックは利用できません。

リースバックを利用したい場合は、見積もり前に修繕しておくなどの措置を講じておきましょう。設備を整えておくと、後々賃貸で住み続けても快適に暮らせます。

瑕疵には心理的瑕疵もあり、事件や事故が起こった、いわゆる事故物件といわれるものが該当します。この場合もリースバックの利用は難しい傾向にあります。

既存不適格物件とは、建築基準法や都市計画法、自治体の条例などの基準を満たしていない物件です。「不適格」というとネガティブなイメージですが、建築基準や条例、規制などは時代とともに変わります。

新築した時には基準を満たしていても、いざ売却する時には基準を満たしていない可能性も十分にあります。古い物件の場合は、リースバックの事業者に相談してみましょう。

その他の特殊な物件は、事業用に使っていたり、テナントが入っていたりといった物件です。この場合も事業者に確認しましょう。

持ち家の所有者以外に、別居家族などの同意も必要?

契約する様子

リースバックは、近隣住民や他の人に知られずに持ち家の売却ができるサービスですが、例えば別居している家族の同意は必要ないのでしょうか。持ち家を売るということは、大きな取引になるため、失敗しないよう注意したいポイントをご紹介します。

別居家族の同意は不要

例え両親や子供であっても、リースバック契約には別居家族の同意は不要です。所有権を持つ人が承諾していれば、手続きを進められます。

ただし、将来、物件を相続する立場の人が知らないまま売却すると、後々のトラブルになりかねません。持ち家を売却する前に、リースバックを利用することを相談しておくことをおすすめします。

共有名義人の同意は必要

リースバック契約をする物件を配偶者やパートナーなどと共有している場合は、共有名義人の同意は必要です。複数、名義人がいる場合は全員の同意をとります。

リースバック利用時に保証人は必要?

賃貸借契約

リースバックを利用する持ち家の所有者の同意があれば、手続きを進められますが、一般的な賃貸契約には保証人が必要です。リースバックでは保証人は必要なのか、審査基準などについてご紹介します。

原則、保証人は不要

リースバックでは原則、保証人は不要です。ただし、次のような場合、保証人を立てるよう依頼されることがあります。

・持ち家の住宅ローンを滞納している
・安定した収入がない
・毎月の家賃が10万円以上になる
・住宅ローン以外の金融ローンの残債がある

家賃保証会社の審査に通過する必要がある

多くの場合、リースバック申込みの際には、家賃保証会社の審査が入るため、この審査に通過しなくてはなりません。年齢制限などはありませんが、リースバック契約後にきちんと家賃を支払えるかどうかを判断するためにおこなわれる審査です。

安定した収入があることなどが重要になります。家賃保証会社の審査に落ちた場合でも、保証人を立てることで契約できる場合もあります。

「リースバック」「通常売却」「不動産担保ローン」「リバースモーゲージ」のどれを選ぶべき?

天秤を使った比較

所有する不動産や持ち家を売却して資金調達をする方法には、リースバックの他に「通常売却」「不動産担保ローン」「リバースモーゲージ」などがあります。自分に合った方法で資金調達ができるよう、それぞれのサービスや特徴について解説します。

通常売却とは?

通常売却とは、持ち家の所有者の意思のみで売却ができる一般的な取引のことです。売却価格も、所有者が決められます。複数の不動産業者に仲介を依頼すると、より多くの人の目にとまり、早い時期に売却できる可能性が高まります。

不動産担保ローンとは?

不動産ローンとは、所有している持ち家(不動産)を担保にしてお金を借りる仕組みです。

お金を借りる人の信用情報と不動産の価値などを加味して、融資額が決まります。不動産の価値の評価をおこなうのに一定の日数がかかるため、申込みから融資までの期間は他の方法に比べてやや長くなります。

しかし、不動産という大きな担保があるため、少額の借入ができる無担保ローンよりも、多額の融資が見込め、金利も低く設定されています。

金融機関によっては最長35年と返済期間が長いのも大きな魅力です。ただ、返済が滞ると、担保にしている不動産は強制的に売却されるため、慎重に利用しましょう。

リバースモーゲージとは?

リバースモーゲージとは、持ち家を担保にしてお金を借りる制度です。

リースバックと同様に借入後も引き続き持ち家に住み続けられますが、借入人が亡くなった時に持ち家は売却され、一括返済にあてられます。

そのため一般的に高齢者向けの貸付制度といえます。借入金は一括、または限度額の範囲内で毎月定額を受け取れます。

毎月の負担は、借入金の利息のみになるので、月々の負担を減らせるのが大きなメリットです。

しかし、あくまでも融資になるため、年齢や収入などの制約があり、審査もおこなわれます。所有者が亡くなった後、相続財産は売却されるため、相続人の同意が必要です。

比較表

リースバックや通常売却、不動産ローン、リバースモーゲージをそれぞれ所有権や住み続けられるか、などの観点から比較してみましょう。

リースバック通常売却不動産担保ローンリバースモーゲージ
住宅の所有権リースバック事業者に移る買主に移る変更なし変更なし
⇒ 所有者が亡くなった後に移る
資金の受け取り方法一括で受け取り可能一括で受け取り可能一括で受け取り可能一括または、借入限度額内で毎月定額
住み続けられる条件「普通借家契約」を結び、家賃滞納をしない住めない返済を滞らせない所有者が亡くなるまで住める

リースバックを利用すると「生活保護」を受けられる?

高齢者の人形とお金

生活保護を受ける条件として不動産を所有していてはいけないと考え、持ち家を売却する手段としてリースバックを検討する方もいらっしゃいます。

しかし、生活保護の観点では、自宅は必ずしも、絶対に売却しておかなければならないというものではありません。生活保護とリースバックの関係について詳しく解説します。

生活保護の概要

厚生労働省では生活保護制度の趣旨を「生活に困窮する方に対し、その困窮の程度に応じて必要な保護を行い、健康で文化的な最低限度の生活を保障するとともに、自立を助長することを目的」(※2)としています。さらに生活保護を受けられる要件の中には、世帯の全員が活用できる資産や能力などあらゆるものを最低限の生活の維持するために活用するよう定めています。

つまり、最低限の生活の維持のために必要な資産を持っていても、生活保護を受給できる要件を満たしているのです。

※2 出典:【厚生労働省】生活保護制度 制度の趣旨

生活保護で受給できる金額

生活保護を受給できる金額は、住んでいる地域で最低限の生活を送るために必要な金額によって異なります。

生活保護の扶助の種類は「生活扶助」「住宅扶助」「教育扶助」「医療扶助」「介護扶助」「出産扶助」「生業扶助」「葬祭扶助」と8種類があります。

中でも「生活扶助」には、食費や被服費など個人が生活する上で必要な費用である「第1類費」と水道光熱費など世帯全体が必要な「第2類費」に分かれます。

例えば東京23区内(1級地-1)に住んでいる40歳の単身者で持ち家がある人の必要生活費を計算してみましょう。持ち家で住宅ローンもない場合、住宅扶助は加算されません。また、介護などの他の扶助は不要とします。

生活扶助(第1類費)40,270円+生活扶助(第2類費)43,430円=83,700円
最低限な生活に必要な月額は83,700円となり、収入では足りない分が生活保護として支給されます。

「資産を活用していること」が生活保護の前提のひとつ

生活保護制度では、生活に利用されていない土地・家屋などがあれば売却して生活費にあてることが前提条件となります。

しかし、生活に利用している不動産であれば、売却は必ずしも求められません。

ただし、あまりにも大きな家や価値のある物件であれば、売却を求められる可能性はあります。

持ち家を活用して「住宅扶助」を受給しないのであれば、生活保護は受給される可能性があります。「生活保護を受けるためにリースバックを利用」と結論を急がず、必ずしも物件を手放すことが必要ではないため、慎重に検討しましょう。

持ち家をリースバックしたいときの具体的な流れは?

段階をふむイメージ

通常の融資や持ち家売却とは異なり、リースバックは手続きが少し複雑に感じる人もいるでしょう。そこでリースバック申込時の一般的な手続きの流れを解説します。

リースバック申込時の一般的な流れ

リースバック申込時の一般的な流れは次のとおりです。

1.リースバック査定の申込
2.面談・物件の調査
3.家賃保証審査
4.リースバック条件確定
5.契約
6.決済・賃貸借契約開始

リースバックはまずWEBなどから査定の申込をしましょう。複数の事業者に見積もりをしてもらい、比較検討することも大切です。少し手間はかかりますが、見積もりは無料でおこなってくれる事業者がほとんどです。

最初の時点では、物件のある住所の相場や築年数など、提供された情報のみで机上査定をおこなうため、最終的な査定額とは誤差が出る可能性がありますが、他社との比較検討には十分でしょう。

売却価格やリースバック後の家賃の査定額が提示され、リースバックを利用する事業者が決まれば、担当者との面談に進みます。査定内容や賃貸借契約についての詳しい説明があります。

この時には担当者が実際に物件の状態を見て、査定していますので、正確な査定額を伝えてもらえます。リースバックについて疑問点や不安なことがあれば、この時に聞いておくと良いでしょう。

すでに利用している駐車場や駐輪場などがリースバック契約後も利用しつづけられるかどうかは、管理会社に事前に問い合わせておきましょう。

査定額や契約内容について事業者と合意できれば、次は家賃保証会社の審査になります。リースバック契約後、毎月の家賃をきちんと支払えるかの審査です。審査には1~2日ほどかかります。

家賃保証会社の審査に通れば、正式なリースバック条件が確定します。査定額やその後の契約内容など、細かな点まで確認して問題なければ契約の意思を伝えましょう。

事業者側の社内決裁も完了すれば、いよいよ正式な売買契約手続きです。売却代金が支払われますので、住宅ローンがまだ残っている場合は、一括返済しましょう。

どのくらいの期間で現金を得られる?

リースバック申込から実際に持ち家を売却した現金を得られるまでの期間は、事業者や査定内容などによって異なります。一般的には1週間~1か月が目安です。

リースバック申込で必要となる書類

リースバック申込から契約にいたるまでに必要な書類は以下のとおりです。

・納税通知書や課税通知書などの固定資産税額が分かるもの
・収入証明書
・住民票の写し
・管理費・修繕積立金が確認できる書類(管理会社から送られるハガキや引き落としが分かる通帳など)
・住宅ローン残高明細
・本人確認書類
・印鑑証明書
・登記識別情報通知または権利証

住宅ローンを組んでいる金融機関によっては、住宅ローン残高明細の発行に日数がかかる場合があるので、早めに用意しておきましょう。また、契約時には印鑑登録をしている実印も必要になります。

リースバックで万が一トラブルになったときの相談先は?

悩みごとがある老夫婦のイメージ

きちんとした事業者、長い期間提供実績のある事業者を選択できればリースバックは安心して利用できるサービスです。しかし、万が一、不測のトラブルがあった際に相談できる相談先を知っておくとより安心できるでしょう。信頼できる相談先をご紹介します。

消費生活センター

消費者センターでは、消費者の目線になって専門の相談員が相談の受付、対策方法のアドバイスなどをおこなっています。不動産取引は複雑で、持ち家の売却はクーリングオフが適用されないため、困った時はすぐに相談するとよいでしょう。

消費者ホットラインは全国どこからでも局番なしの「188」でつながります。最寄りの消費者センターを案内してくれます。

消費者ホットラインはこちら

国土交通省

国土交通省では、リースバックの適切な活用方法や留意点などをとりまとめてガイドラインを発行しています。特定の事業者に関する苦情や相談がある場合に活用すると良いでしょう。国土交通省の「都道府県に関する窓口」にアクセスすると、事業者の本社のある行政府の相談窓口が掲載されています。

▼国土交通省 都道府県に関する窓口 宅地建物取引業免許(知事免許)に関する窓口一覧はこちら

裁判外紛争解決手続

裁判外紛争解決手続とは、裁判を起こさずに当事者間の問題を公正かつ中立的な立場の第三者を介して解決を図る制度です。トラブルの種類や内容に応じて、窓口が設置されています。一般社団法人日本不動産仲裁機構の「不動産の取引、管理、施工、相続その他の承継に関する紛争」窓口(03-3524-8013)に相談しましょう。

かいけつサポート 認証紛争解決サービスはこちら

持ち家のリースバックは、事業者を慎重に選んで間違いのない取引を!

持ち家を売却して大きな資金が手に入り、そのまま住み続けられるリースバックは得るものが非常に多いサービスとして今注目されています。ただ、不動産取引は複雑になることがあるため、リースバックについてメリットだけではなくデメリットも含めてしっかりと把握しておきたいものです。その上で信頼ができて実績のある優良事業者を慎重に選びましょう。事業者が運営するサイトなどを参考にすると良いでしょう。

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