自宅を売ったあとも長く住み続けられるリースバックは、現在注目を集めているサービスです。
この記事では、リースバックで賃貸に変わった後の室内設備の修繕費の負担について詳しく解説します。
リースバックで自宅に住み続ける場合は、リースバック事業者や契約内容によって決まり事もさまざまです。通常の賃貸借契約とは少し異なるため、とまどわれる人も多いでしょう。
この記事では、賃貸期間中に設備が故障した場合の修理費用は賃借人と賃貸人のどちらが負担するのかという点について、またそのなかで、建物の修繕費用に関して一般的にどうなっているかを解説します。
リースバックのお金に関する疑問を解決するために役立ててください。
リースバック後に給湯器などの設備が壊れた場合に修繕費は自分で負担しないといけないのか知りたい
なお、リースバックについての基本知識等の詳細解説と大手リースバック会社の比較は以下の記事も合わせてご覧下さい。
穴吹興産 竹島 健
区分投資事業部 企画系(バックオフィス)課長
【資格】
・宅地建物取引主任者
・1級ファイナンシャル・プランニング技能士
【経歴】営業マンとして新築マンションで12年、その後7年間リースバックを中心に中古マンション買取事業に従事。優秀営業マン賞等受賞。現在は経験を活かしてリースバック検討に役立つ情報を発信。
リースバックの取材に関する窓口はこちら:stock_mansion@anabuki-kosan.co.jp
結論:リースバック後の修繕費の負担は誰が行う?
最初に結論ですが、リースバック後に室内設備の故障などに伴い発生する修繕費は、賃借人負担となることが一般的です。
室内設備の故障に伴う修繕費は賃貸人負担ではないんですね
はい、リースバックが通常の賃貸借契約と取り扱いが異なる点として、室内設備の修繕金負担が挙げられます
室内設備の修繕費は賃借人負担
リースバック以外の通常の賃貸借契約では、室内の設備故障に伴う修繕費については賃貸人が負担することになっています。
これは、賃貸人が賃貸物件の設備について、賃借人に対し使用させる義務を負っているからです。
しかし、リースバックでは賃貸中に生じた室内の設備の故障(例えば、給湯器・ガスコンロの故障)に伴う修繕費については、賃借人負担となることが一般的です。
理由は、リースバックでは所有者であった賃借人が以前から住んでいる点が、通常の賃貸借契約とは異なるからです。
リースバック後によくある室内設備の故障事例として、給湯器が挙げられます。
リースバック後の修繕費についてよくある事例として、給湯器の故障があります。
給湯器は電気設備でもあるため10年前後経過すると、故障によって使えなくことがあります。
また、給湯器に使われている部品は8年経過すると生産されなくなることが一般的なため、機器の取り換えが必要となります。
床暖房などの機能がついた給湯器は高額となるため、取り換えに20万円以上必要となるケースもあります
給湯器は直さないと生活できないですが、20万円近い出費となるとつらいですね
マンションにおける修繕積立金は賃貸人負担
マンションで毎月必要となる修繕積立金については、所有者となるリースバック会社の負担となります。
「修繕積立金」と「室内の修繕費」で言葉が似ているため、混同しないように注意が必要です。
マンションにおける管理費・修繕積立金は所有者に支払義務があるため、所有者である賃貸人の負担となります。例外はほどんどありません。
マンションで必要な修繕積立金は、将来のマンション全体の大規模修繕のために計画的に積み立てられるものとなるため、室内の修繕費とは性質が異なります。
マンションの修繕積立金は賃借人が負担しなくても良いということですね
実際は、マンションのリースバックでは毎月の管理費・修繕金を考慮した上で家賃設定が行われいます
室内設備の修繕にも対応するリースバック会社
リースバックでは、通常の賃貸借契約と異なり修繕費の負担は賃借人負担となることが一般的であることを解説しました。
しかし、リースバック会社の中には通常の賃貸借契約と同様に室内設備の修繕費を賃貸人負担としている会社も存在します。
あなぶき興産の「あなぶきのリースバック」では、給湯器の故障も含め室内設備の故障時は賃借人の故意・過失に伴うものでない限り賃貸人のあなぶき興産が対応することとなっています。
リースバック検討のポイントとして修繕費が賃貸人・賃借人どちらの負担になるかも大事ですね
住宅を「持ち家」として保有している場合にかかる費用
自宅を持ち家として保有していると、住宅ローンの支払いをはじめとする費用がなにかとかかります。
持ち家が一戸建てかマンションかによって異なりますが、一般的には次のような費用が必要です。
- 管理費
- 修繕費
- 固定資産税
それぞれについて解説します。
管理費
マンションの場合、他の住民も使う共用スペースの管理や維持のために一定額の管理費が毎月徴収されます。
管理費は、具体的には次のような費用に充当されます。
- マンションの管理人や清掃員の人件費
- 共用部分の水道光熱費を含む設備の維持費
- 管理組合の運営費や会費
- 共用部分にかかる火災保険や地震保険などの保険料
- 照明器具や消防設備、エレベーターなどの保守点検費・修繕費
マンションによっては防犯カメラやAEDなどのレンタル料もかかります。これらの費用を住民側が案分して負担するのが一般的です。
そのため、戸数が少ない小規模なマンションよりも戸数の多いマンションのほうが金額が低くなる傾向にあります。
しかしタワーマンションなどのコンシェルジュが常駐していたり、専用ラウンジがあったりといった設備が充実している物件では、当然管理費は高くなります。
一戸建ての場合は、マンションのように共用スペースはなくすべて所有者のものであり、特に管理費に充当する費用はありません。
ただマンションと同様に火災保険や地震保険などはかかります。セキュリティ面では、防犯カメラの設置費用やホームセキュリティ費用などが必要になるケースもあるでしょう。
修繕費
経年劣化にともなう自宅の修繕費用は、一戸建て、マンションともに必要です。長く住んでいると、水回りやキッチン、壁紙などに修繕が必要になってきます。
一戸建ての場合は、室内に限らず、屋根や外壁など外回りにまで気を配らなければなりません。さらに大規模な修繕が必要な場合は、費用もかなりかかります。
マンションの場合、数年ごとに建物の修繕を行うために「修繕積立金」という名目で積み立てる仕組みが多い傾向にあります。
計画的に数年に一度、共用部分を修繕したり、自然災害などで建物が被害を受けたときに修復したりといった場合に使われる費用です。
防犯システムを最新のプランに変える、エントランスをバリアフリーにするなど、住民の満足度向上や物件の資産価値を上げるために使われることもあります。
さらに新築マンションの場合は、マンション購入時に「管理準備金」や「修繕積立基金」を初回のみ支払うことがあります。
新築マンションでは、ほとんどの入居者が一斉に購入・入居を始めるため、通常のマンションのように積み立てておいた修繕積立金や管理費はありません。
そのため、ある程度のまとまった金額を一括で徴収して、将来的に管理費などの原資にあてるのです。
固定資産税
固定資産税は、毎年1月1日時点で建物や土地の所有権を持つ人が納税する市町村税です。
一戸建て、マンションともにかかる税金です。土地と建物に関しては3年ごと、償却資産は毎年、評価額を見直して課税標準額が決まります。
しかし、どれも市場相場がそのまま評価額になるわけではありません。
土地が宅地であれば、地価公示価格の7割が目安で、建物は評価の時点で同じ建物を建築したときにかかる建築費に経年減点補正率などをかけて計算します。
さらに「住宅用地特例」として200平方m以下の住宅用地は、課税標準額が価格の6分の1、200平方mを超える場合は、200平方mを超えた部分の課税標準額が3分の1になります。
こうして算出された課税標準額に原則1.4%の税率をかけた額が固定資産税です。
しかし、減税措置として「新築住宅特例」などがあります。
2024年3月31日までに建てられた新築住宅は、居住部分の床面積が20平方mまでは2分の1に減額されます。
減税措置は一戸建ての場合は3年間、3階建て以上で耐火構造のマンションは5年間適用が可能です。
その他、自宅のある地域によっては都市計画税が課される可能性があります。
すでに市街化が進んでいる地域や今後10年以内に優先的に市街化を計画している地域を市街化区域といい、市街化区域内にある土地や建物の所有者には都市計画税が課されます。
持ち家の修繕費や修繕積立金はいくら必要?
持ち家を維持していくには、さまざまな費用がかかることが分かりました。税金などは毎年支払っているため、金額の目安がつきますが、修繕費については不明な人が多いのではないでしょうか。
一戸建て、マンションそれぞれの平均的な修繕費用をご紹介します。
一戸建て住宅の修繕にかかる費用
一戸建てに限らず、同じ家で長く生活していると、さまざまな部分に不具合が出てきて修繕費用は多額になります。築年数が経過するごとに費用の合算は膨らみます。
アットホーム株式会社が2023年に発表した「2023年『一戸建て修繕』の実態調査」(※1)によると、一戸建ての修繕にかかった費用の平均は615.1万円で、平均築年数は38年です。
築年数が古いほど、住まいに必要な箇所が欠損したり故障したりといった修繕箇所が出てきて、大きな出費になっていることが分かります。
※1 引用:アットホーム株式会社「2023年『一戸建て修繕』の実態調査」
マンションの修繕積立金
前述したようにマンションは一戸建てとは異なり、管理会社などに修繕積立金を支払い、不測の事態に備えています。
国土交通省が2023年に発表した「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」によると、長期修繕計画に基づく修繕積立金の平均額は次のとおりです。
計画期間全体における修繕積立金の平均額の目安(機械式駐車場除く) | |||
---|---|---|---|
地上階数/建築延床面積 | 専有面積当たりの修繕積立金の月額 | ||
事例の3 分の2が包含される幅 | 平均値 | ||
20階未満 | 5,000平方m未満 | 235 円~430 円/㎡/月 | 335円/㎡/月 |
5,000平方m以上~10,000平方m未満 | 170 円~320 円/㎡/月 | 252円/㎡/月 | |
10,000平方m以上~20,000平方m未満 | 200 円~330 円/㎡/月 | 271 円/㎡/月 | |
20,000平方m以上 | 190 円~325 円/㎡/月 | 255 円/㎡/月 | |
20階以上 | 240 円~410 円/㎡/月 | 338 円/㎡/月 |
「事例の3 分の2が包含される幅」とは、実際の修繕積立金にばらつきがあるため、全体の上下6分の1を除く、3分の2の値を出したものです。
居住年数が長くなると当然、修繕積立金の累計額は多くなりますが、一戸建ての修繕費用と比較してみると、圧倒的にマンションのほうが低くなります。
しかし、マンションの場合はあくまでも共用部分の修繕に使われる費用です。自室の修繕の場合は、自分で修繕費用を負担しなくてはなりません。
修繕が必要となりやすい箇所
アットホーム株式会社の「2023年『一戸建て修繕』の実態調査」から、修繕を行ったことのある箇所を割合が高い順にみてみましょう。
- 外壁…79.2%
- トイレ…75.4%
- 屋根…73.6%
- 給湯器…73.0%
- お風呂…58.8%
- 洗面台…58.5%
- キッチン…50.4%
- 壁紙・内壁…49.3%
- 床…35.6%
- 玄関…30.3%
最も多い外壁の修繕経験者は全体の79.2%にもおよび、1回の修繕費も100.7万円と高額です。
屋根やお風呂の修繕費も同様に大きな出費になります。1回の修繕で済むという保証はなく、予期せぬ災害などのリスクも考慮すると、かなりの修繕費がかかることが分かります。
リースバックを利用すると、修繕費は不要になる?
リースバックは、所有権は移転するものの、引っ越しせずにそのまま同じ家に住み続けたまま、大きな現金が得られる方法として有効的なサービスです。
しかし、持ち家だったときに自己負担していた修繕費は、リースバック後には賃借人と賃貸人のどちらが負担することになるのか、気になるところです。
リースバック事業者や契約内容によっても誰が負担するかが異なるため注意が必要です。契約時にきちんと確認しておかないと、後々のトラブルにもなりかねません。
冒頭でも述べましたが、基本的にはリースバックの場合に室内設備の故障については、賃借人の負担となることが一般的です。
賃貸期間中の修繕費負担について詳しく解説します。
リースバック後の修繕費は原則賃借人負担
リースバック後、つまり物件の賃貸期間中に生じた破損や故障による修繕費は、通常の賃貸借契約とは異なり、原則賃借人が負担するケースが多くなっています(一般的な賃貸借契約では賃貸人が負担)。
リースバックの性質上、同じ住民が同じ家にそのまま住み続けるため、契約の形態が変わっても住民が修繕費を払うという考え方です。
さらに、引っ越しをしていないため、修繕箇所や傷がどの時点でついたものかを判別しにくいという点も理由のひとつです。
リースバック事業者のなかには、実質修繕にかかる費用を見込んだうえで家賃を設定することもあるため注意しましょう。
リースバック事業者によっては、通常の賃貸借契約と同じように、室内設備の不具合を賃貸人が負担してくれるところもあります。
例えば、あなぶき興産の提供する「あなぶきのリースバック」では、賃貸中に通常の使用に伴い発生した設備(床暖房設備を除く)の故障については賃貸人が負担することになっています。
修繕費の負担をデメリットのひとつと諦めず、こうした事業者を探すとよいでしょう。
「過失」による故障が発生した場合はほぼ賃借人負担
賃貸借契約の内容により異なりますが、一般的には賃借人側の過失が原因の場合には修繕費用はほぼ自己負担になります。
例えば、住民の過失による火災や水漏れ等による修繕が該当します。なお、リースバック利用前に破損していた箇所についても賃借人負担となります。
リースバック後に「火災」が発生した場合の対応(火災保険)
持ち家、賃貸に限らず、火災になったときは、物理的損害や経済的損害が大きくなります。できれば、火災は起こらないよう注意したいものですが、隣家からの火災で被害を受けることもあります。
例え他人が起こした火災であっても、物件に損害を与えれば、賃貸人に対して賠償義務が発生します。
リースバック後に火災が起きたときの対応について解説します。
火災保険料の一部を賃借人が負担する
通常、火災保険に加入するのは、物件および不動産の所有者です。
そのため、物件の所有者であるリースバック事業者が火災保険に加入することになりますが、賃借人は賃借人専用の火災保険に加入する必要があります。
火災保険の保証内容は商品によって異なります、一般的には次のような補償があります。
- 火災保険
- 家財保険
- 借家人賠償責任保険
- 個人賠償責任保険
自宅が火災や落雷、爆発、破裂などの被害に遭ったときの補償で、一戸建ての場合は、建物と建物に付随する門や塀、ガレージなどが対象となります。
マンションの場合は被保険者が専有している居住スペースのみが対象となり、廊下やバルコニー、階段などは対象外です。これらの共有部分については管理組合が火災保険に加入していることがほとんどです。
生活していくうえで必要な家財が被害を受けたときの補償で、家具や電化製品、食器、日用品、骨とう品、貴金属、自転車などが含まれます。
建物の補償はリースバック事業者の加入している火災保険でまかなえますが、家財に関する補償はいわば自分の家財を守るための保険ですので、住民である賃借人が支払います。
物件の所有者に賠償をするための保険です。リースバック期間中は住民が賃借人であり、リースバック事業者が所有者です。
火災などで物件に損害が発生したときに、リースバック事業者に対して賠償責任を負います。
また、将来的に自宅を退去するときには、原状を回復した状態で所有者に返さなくてはならないことがあります。このようなときに借家人賠償責任保険に加入していれば安心です。
原状回復のために莫大なお金を払うより、保険に加入しておいて補償を受けるほうが経済的にもダメージが少ないでしょう。
日常生活のあらゆるトラブルに備えられる保険です。
例えばマンションの場合、水道の水を出しっぱなしにしたり、漏水していたりといったことがあれば、下の階にまで水が漏れてしまうことがあります。この様な場合、故意ではなくても、下の階の住民から損害賠償を請求されることがあります。
その他、家族が偶然に他人にケガをさせてしまった、他人の物を壊してしまったなどの場合でも補償の対象となります。
このように、火災保険に関する保証内容は様々です。リースバック契約を行うときは、必要となる火災保険のオプション加入を検討するのがおすすめです。
リースバック後のリフォーム・建て替えは基本的にNG
リースバックは、通常の賃貸借契約とは異なるため、独自のルールがあります。
具体的には、リースバック利用期間中のリフォームや建て替えをしたくなったときの対応です。
リースバック事業者や契約内容ごとに異なりますが、一般的な傾向をご紹介します。
リフォームは基本的に勝手におこなうことはできない
結論からいうと、リフォームをおこなう場合、基本的には賃貸人へ相談・確認が必要です。さらに許可が得られたとしても、リフォームにかかる費用は、賃貸人の負担になります。
リースバックは住民が長く同じ家に住み続けられるサービスですから、住民が日常生活を快適にするためのクロスや床の張り替え、水回りの交換など、軽微なリフォームは賃貸人の理解も得られやすいでしょう。
しかし、壁を壊したり間取り自体を変えたりといった大規模なリフォームの場合は、許可が出ないことがほとんどです。
建物の価値が下がってしまい、賃貸人であるリースバック業者に損害を与える可能性があるためです。
賃貸人の許可を得ずにリフォームを行った場合、現状回復を求められることがあります。
いずれにしても、リフォームを検討しているときは、リースバック事業者に相談して事前に確認をとっておくとよいでしょう。
リースバックでは一般の賃貸のような「造作買取請求権」はない
リースバックでは、一般的な賃貸借契約のような「造作買取請求権」はありません。
「造作買取請求権」とは、賃借人が賃貸期間中に物件につけた造作(建具や畳、エアコン、電気・水道設備など)を賃貸人に対して買取を請求できる権利を指します。
リースバックでは、例えそれらの造作をつける許可があったとしても、付加価値をつけて買い取ってもらえることはありません。
あくまでも住みよさを追求するにとどめておきましょう。
「建て替え」は基本的にNG(※戸建ての場合)
おもにリースバックを利用する物件が一戸建ての場合になりますが、建て替えは基本的にできません。
長く住んでいる自宅であっても、所有権はリースバック事業者にあり、自由に建て替えはできないのです。
ただし耐震のための建て替えなど、物件の資産価値が向上するような場合、なおかつ所有者と交渉し同意を得られた場合などの例外はあります。
しかし、基本的にはできないものと考えておいたほうがよいでしょう。
賃貸を終え「退去」する際の対応
リースバックを利用して、同じ家に住み続けることを選んだ人でも家族の事情などで、退去する場合があります。退去時の対応について解説します。
通常の賃貸借契約では、原状回復は基本的に借主が負担
通常の賃貸借契約では、住民が部屋を退去した後は賃貸人側がリフォームなどで原状回復をおこないます。
原状回復とは、その建物が「本来存在したであろう状態」に戻すことです。
2011年8月に国土交通省住宅局が発表した「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」(※3)によると、ガイドラインのポイントとして「建物の価値は、居住の有無にかかわらず、時間の経過により減少するものであること、また、物件が、契約により定められた使用方法に従い、かつ、社会通念上通常の使用方法により使用していればそうなったであろう状態であれば、使用開始当時の状態よりも悪くなっていたとしてもそのまま賃貸人に返還すれば良いとすることが学説・判例等の考え方であることから、原状回復は、賃借人が借りた当時の状態に戻すものではないということ」と「賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損(以下「損耗等」という。)を復旧すること」と述べています。
出典 国土交通省住宅局「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」
通常の使用ではあり得ない損耗・毀損がない限り、賃借人が借りた当時の状態に戻す義務はなく、時間の経過による多少の状態の悪さは考慮されるのです。
リースバックの賃貸借契約では、退去時の原状回復が不要となることも
リースバック契約が終了して、賃借人が退去したあとの物件の取り扱い方法はリースバック事業者によってさまざまです。
そのまま物件を売却する事業者もあれば、取り壊しやリノベーションをする事業者もいます。
ただし原状回復が不要となっている契約でも、賃貸人に無許可で間取りの変更などの大規模なリノベーションをおこなっている場合は規約違反となります。
その場合、ペナルティとして原状回復を求められることがある点に注意しましょう。
「修繕費」について心配な場合のリースバック事業者の選び方
通常の賃貸借契約とは異なるリースバックの仕組みに戸惑われる人も多いでしょう。
修繕費に関しても出費がかさむのではと不安を感じる人もいます。まずはリースバックの一般的な契約までの流れを確認しておきましょう。
- リースバック査定・検討
- 担当者との面談・物件調査
- 家賃保証審査
- リースバック条件確定
- 契約
- 決済・賃貸借契約開始
リースバックを検討している人はまずは不動産会社やリースバック事業者に、自宅の査定を依頼しましょう。多くの事業者が電話やメール、WEBなどで無料査定を実施しています。
無料査定はあくまでも机上査定になるため、あとで買取金額が変更になる場合もあります。査定金額は目安としてとらえておくとよいでしょう。
査定金額を提示されて納得できる金額であれば、担当者と面談をおこない、査定や賃貸借契約について説明があります。
このとき、賃貸借契約期間中の修繕費の負担やリフォームの可否、火災保険の補償内容などを確認しておくとよいでしょう。
こちらの希望を伝えたうえで、最適なプランを提示してもらいましょう。また、実際に担当者が自宅を見て査定額を確定します。
家賃保証会社の審査は、賃貸借契約に切り替わったあともきちんと家賃が支払えるかの審査です。結果は1~2日ほどでわかります。
続いて査定や契約内容に問題がなければ、条件が確定し、不動産売買契約にうつります。
自宅の売買代金は一括で支払われます。決済が完了すれば賃貸借契約が開始されます。
査定から利用までの期間は、1週間~1ヶ月と非常にスピーディーです。また、良心的なリースバック事業者であれば、どんなささいな疑問にも親切丁寧に教えてくれます。
修繕費などの不安がある場合のリースバック事業者の選び方を詳しく解説します。
物件買取額がなるべく高く、家賃設定が柔軟な事業者を選ぶ
リースバックは、自宅を売却することで大きな資金を手元に残せます。
さらに住宅ローン返済の代わりに月々の家賃が発生しますが、この家賃負担を極力抑えられれば、貯蓄にまわせる資金が増えます。
万が一の過失による修繕が発生したとしても、手元の資金で十分まかなえるのです。
自宅の売却額と毎月の家賃額はリースバック事業者がさまざまな要素を考慮して決定します。
売却額をなるべく高く、家賃を低く設定してもらえれば、理想的です。
売却価格はリースバック事業者によって異なることもあるため、できるだけ高く売却したいなら、複数社に査定を依頼して比較検討してみるのもよいでしょう。
家賃の設定に関しては「〇〇万円までで抑えてほしい」といった希望を聞いて、柔軟に設定してくれる事業者もいます。
無理のない家賃設定は長く住み続けられることにもつながるため、売主が側のニーズを汲み取ってくれる良心的な事業者を選びましょう。
さらに不動産仲介ではなく、直接買取をおこなっているリースバック事業者なら、仲介手数料が不要で経費を節約できます。
室内設備の修繕までフォローしてくれる事業者を選ぶ
長く住めば住むほど、室内設備の不具合が出てくるのはよくあることです。
特に水回りやトイレ、お風呂などは生活に深く関わる場所だけに、故障したときは迅速な対応が不可欠です。
リースバック事業者を選ぶときは、室内設備の修繕をフォローしてくれるかどうかを確認しておきましょう。
契約にいたるまでの間に、詳しく聞いておくと安心して任せられます。
リースバックでは修繕費が貸主・借主どちらの負担になるか確認しよう
リースバックは、住宅ローン返済の負担がなくなるだけではなく、管理費や修繕費などの費用を削減できるのも大きなメリットです。
さらに自宅を売って得た資金の使い道は自由で、老後資金の確保や相続問題の対策にもなります。
リースバックを利用した後に修繕費の負担でトラブルにならないためには、契約時にしっかりと細かな部分まで確認しておくことが大切です。
柔軟な家賃設定が可能で、室内設備の修繕に迅速に対応してくれる信頼のおけるリースバック事業者を見つけましょう。