自宅の住み替えは自宅の売却と新居の購入という大きな不動産取引をおこなうため、慎重に進めなければなりません。
リースバックは今の住まいを売却しても、新居購入まで住み続けられるため、仮住まいの費用がかかりません。
この記事では、自宅の住み替え方法とリースバックを利用する費用面でのメリットについて解説します。新居へスムーズに住み替えるためにも、ぜひ参考になさってください。
売却価格だけではなく、住宅ローン審査や住み替えにかかる費用なども気になる…
自宅を住み替えるとき、リースバックを検討してみるのは1つの方法です。
なお、リースバックについての基本知識等の詳細解説と大手リースバック会社の比較は以下の記事も合わせてご覧下さい。
穴吹興産 竹島 健
区分投資事業部 企画系(バックオフィス)課長
【資格】
・宅地建物取引主任者
・1級ファイナンシャル・プランニング技能士
【経歴】営業マンとして新築マンションで12年、その後7年間リースバックを中心に中古マンション買取事業に従事。優秀営業マン賞等受賞。現在は経験を活かしてリースバック検討に役立つ情報を発信。
リースバックの取材に関する窓口はこちら:stock_mansion@anabuki-kosan.co.jp
自宅を住み替えるタイミングと住み替え方法3つ
自宅を住み替えるタイミング
個人のライフステージや経済状況が変化したことをきっかけに、自宅の住み替えを検討する人が少なくありません。
国土交通省が発表した「平成30年住生活総合調査結果」(※1)によると、今後5年以内に住み替えを考えている人の目的でもっとも多いものは「広さや部屋数」で42.3%でした。
以降は「使いやすさの向上」が31.9%、「新しさ・きれいさ」が27.4%となっています。
部屋の広さや利便性を求めているということは、ライフステージが大きく影響していると考えてよいでしょう。
しかし自宅の住み替えにはそれなりに大きな費用がかかります。
実際に、住み替えようと考えている世帯のなかでもっとも多い課題が「資金・収入等の不足」です。
とくに定年退職を控えている場合、「住宅ローンの審査が通るか不安」というように資金面で悩んでいる人も少なくありません。
高齢期での自宅の住み替えの検討には、まず資金面の課題を解決することが大切です。
※1 出典:国土交通省住宅局「平成30年住生活総合調査結果」
自宅の住み替え方法 3つ
自宅を住み替えるには、現在の自宅の売却と新居の購入が必要です。
スムーズに住み替えられるように、まずは自宅の住み替え方法として「売り先行型」「買い先行型」「同時進行型」の3つの方法を紹介しましょう。
自宅の売却と新居の購入の順番が違うんですね
売却と購入どちらから先に進めるかで、かかる費用が変わってきます。
1. 「売り先行型」の流れ
「売り先行型」は、まず現在住んでいる家を売却してから、新居を探して購入する方法です。流れは以下のようになります。
- 売却して住宅ローンを完済
- 仮住まいへ引っ越す
- 新居購入後に引っ越す
「売り先行型」は、売却費用を手に入れてから新居を購入するため、資金計画が立てやすいというメリットがあります。
売却後、条件にあう新居が見つかればスムーズに購入手続きを進めることができるでしょう。
ただし、すぐに新居を見つけることができないときは、売却後に住むための仮住まいが必要です。
仮住まいの期間が長くなる可能性も考えておかなければなりません。
2. 「買い先行型」の流れ
「買い先行型」は、先に新居を購入してから売却する方法です。流れは以下のようになります。
- 家の引き渡し日と同じ日に新居の決済をおこなう
- 新居へ引っ越す
- 自宅を売却する
「買い先行型」は、家に住みながら新居を探せるため、じっくりと選んで購入できるメリットがあります。
引っ越しも終えてから売却手続きを進めるため、気持ちにゆとりはありますが、一時的に二重の住宅ローンを支払うことにもなるため、そのぶん資金の確保が必要です。
また住宅ローンが残っている場合、返済能力などが厳しくチェックされます。新居の住宅ローンの審査がとおりにくいため、頭金などの購入費用を用意しておくことが大切です。
3. 「同時進行型」の流れ
「同時進行型」は、自宅売却と新居購入を同時におこなう方法です。流れは以下のようになります。
- 新居の売買契約を結ぶ
- 家の売却手続きをする
- 家の引き渡し日と同じ日に新居の決済をおこなう
新居と家の売買契約のタイミングはケースによって若干の前後はあるものの、ほぼ同時期に進めるため、手続きが複雑になるうえに購入と売却のタイミングがずれる可能性もあります。
また同時進行型で住宅ローンが残っている場合は、新居の住宅ローン融資実行日まで現在の住宅ローンを完済することが必要となる場合があります。
つまり売却して完済できる見込みがなければ、住み替えは難しくなるということになります。
「同時進行型」で住み替えるなら、資金の確保や契約締結の順序などしっかりと計画を立てておくことが大切です。
自宅の住み替えにリースバックを利用するメリット
住み替え費用など資金計画をしっかりと立てておくには、ある程度経済的なゆとりも必要です。
高齢で預貯金も限られているときは、リースバックを活用(自宅を売却)することで住み替え費用を確保することもできます。
リースバックが住み替え時にもたらすメリットについて解説します。
計画的な資金調達が可能
リースバックなら売却資金で持ち家の住宅ローンを完済するため、買い先行の課題でもある資金面をクリアしやすいというメリットがあります。
ほかにも、資金があることでダブルローンのリスクを避けられる点も大きなメリットといえるでしょう。
とくに「買い先行型」で発生するダブルローンの経済的負担を避けることができます。
返済負担が軽くなるため、住み替え後の生活にゆとりをもつことができるでしょう。
自宅に住み続けられる
自宅を先に売却する場合、新居が見つかるまで賃貸など仮住まいが必要ですが、リースバックなら売却手続き後も自宅に住み続けられるというメリットがあります。
売却査定も最短の場合1日程度で済むため、忙しい方でも必要な手続きを終えやすく、また自宅を手放したことを周囲に知られることなく売却手続きを進めることできます。
売却した自宅にそのまま住み続けるため仮住まいへ引っ越しするための費用も不要となり、そのぶん新居へ引っ越すときの資金にもゆとりをもつことが可能です。
新居の住宅ローン審査に通りやすい
高齢で返済能力に不安がある方でも、リースバックを利用することで住宅ローンの審査に通りやすくなる可能性があります。
理由としては、リースバックで得た売却資金を新居購入時の頭金として活用できるためです。
資金にゆとりがなくても、まとまった頭金を用意できます。
購入後の生活資金も確保できるため、スマートな住み替えが可能です。
自宅の住み替えにリースバックを利用するときの注意点
自宅の住み替えにリースバックを利用するときは、メリットばかりではありません。
気にかけてほしい注意点を3つ解説します。
1. 売却価格が市場価格より低くなりやすい
一般的にリースバックで不動産を売却するときは、市場価格の70%程度とされています。
しかし、これは普通借家契約で住み続ける場合が前提となっています。
住み替えを前提としたリースバックの場合は、6カ月~1年といった比較的短期間の定期賃貸借契約となることが一般的です。
定期借家契約のリースバックの場合、期間満了後に確実に退去が必要となる代わりに普通借家契約の売買価格よりも高くなる傾向があります。
そのため、住み替えを前提としたリースバックでは売買金額は、70%~90%程度で考えます。
もし市場価格が2,500万円なら、買い取った不動産を売却するときは2,250万円~1,750万円の売却価格となります。
2. リースバックにおける「利回り」という考え方
リースバックでは「利回り」を重視して査定をおこないます。利回りは以下の計算式で求めます。
計算式からもわかるように、売却価格が上がれば利回りは低くなるわけです。
利回りが低くなるということはリースバック事業者の収益性が悪化するため、収益性を担保するために売買金額を低く設定する必要があると考えることができます。
3. 家賃が周辺相場より高くなる場合がある
通常、賃貸物件の家賃を決めるときは、周辺の物件を比較して決める「賃貸事例比較法」が使われます。
「賃貸事例比較法」は文字通り周辺の似たような物件の事例を集めて、立地や築年数などを考慮して決める方法です。
しかしリースバック後の家賃を決めるときは、上の見出しでも解説した「積算法」を使用します。
事前に買取価格を設定し、期待利回りを掛けて12か月で割った平均額と、必要経費を加えた額が家賃となります。
つまり、リースバックでは売買金額(買取金額)と家賃がある程度連動するということになります。
そして近年の傾向として東京23区内等の一部の都市部エリアにおいて、売却金額(買取金額)が急騰しています。
売買金額が高くなれば家賃も必然的に高くなるため、売却金額が急激に高騰しているエリアでは家賃相場に対して家賃が高くなるという場合もあるのです。
あくまで一例のため必ずしもそうなるわけではありませんが、以上のような理由によってリースバックでは売却価格が高くなることで、結果的に家賃が周辺の家賃相場よりも高めになるということがあります。
ただし賃貸借期間が短期に設定されているリースバックでは、事業者にとってみれば賃借人の退去が確実であり、退去後の転売益が見込みやすいため、売買価格と家賃のバランスを度外視した査定も行われています。
住み替え以外にリースバックを活用する方法
リースバックはまとまった資金を確保できるため、自宅の住み替え以外にも活用が可能です。
具体的にどのようなことに活用されているのか解説します。
1. 老後資金の確保
定年後の生活のために、老後資金に悩む人は少なくありません。一般的に60代以上で必要とされる1カ月の平均支出額は29万円(※2)といわれています。
定年退職後、預貯金など十分な備えがない場合、家をリースバックで売却してまとまった資金を確保することが可能です。
※2 出典:厚生労働省「一緒に検証!公的年金~年金の仕組みと将来」
▼老後の資金調達にリースバックがおすすめな理由は、こちらの記事で詳しく解説しています。
2. 借金することなく、自由に使える資金を確保
高齢者が家にかかるコストを抑えて住み続ける方法に、リバースモーゲージというサービスがあります。
最初に自宅を売却し売却資金を得るリースバックに対し、リバースモーゲージは自宅を担保とし金融機関から借入金を得る仕組みです。
同じ家に住み続けながら資金調達ができるという点ではリースバックと同様ですが、リバースモーゲージは借金を負うという点に注意が必要です。
さらに契約者の死亡、もしくは契約満了時には担保にしていた自宅が返済のために売却されることとなります。
得られる資金が借金というかたちではないため、人によってはリースバックの方がすっきりとした気持ちで老後の資金として、あるいは高齢者施設の入居費用などとして好きなように使えるでしょう。
リースバック前に住み替えにかかる予算を立てる
住み替え検討時にとても便利なリースバックですが、利用するときは事前に住み替えにかかる費用全体を計画的に見積もることが大切です。
とくに大きな費用がかかる、引っ越し費用と住宅ローンについて解説します。
「売り先行型」仮住まい用の引っ越し費用
リースバックでは一般の不動産売買の市場価格より買取価格が下がる傾向にあるため、少しでも高く売るためにリースバックではない通常の不動産取引での「売り先行型」を検討する人も少なくありません。
高く売却して仮住まいをした方が、手元資金を多く残せるという考え方も実際にあります。
どの方法で売却したほうが高値になるのか、各方法でかかる費用を算出してみましょう。
さらに「売り先行型」では仮住まいの賃料と引っ越し費用がかかります。
事前にいくつか賃貸物件を調査して、賃料の相場を調べておくと良いでしょう。
また引っ越し費用は、時期と依頼する業者で費用が大きく変わってきます。
3月〜4月と9月〜10月の繁忙期は料金が倍になることも多いため、少しでも費用を抑えたい方は繁忙期を避けて引っ越しをしましょう。
「買い先行型」ダブルローン状態の生活費
「買い先行型」の場合、新居の売買契約を結んでから家を売却するまでの期間でダブルローン状態となります。ダブルローンの支払いにも耐えられるのか、事前にシミュレーションを立てることが大切です。
そもそも、ダブルローンは返済能力がなければ審査は通りません。
審査が通ると最初の住宅ローン控除は外れてしまうため、控除を利用されている方はこうした面を考慮することが大切です。
新たなローンを負担するために、どのくらい生活に影響が出るのか計算したり、情報を収集しておきましょう。
自宅の住み替えでリースバックを利用するならプロに相談しよう
自宅の住み替えでは、仮住まいへの引っ越し代金やダブルローンなど増える負担額を事前にシミュレーションしつつ、最適な手段を探すことが大切です。
自己資金の不足などが理由でダブルローンが組めないときは、リースバックの利用も検討しましょう。
ただしリースバックは会社ごとに契約条件が異なるため、売却後の賃料や買い戻しなどでトラブルになるケースも少なくありません。
「できるだけ長く住み続けたい」「安心できる生活を送りたい」とお考えなら、リースバックを専門に扱うプロへご相談ください。
無料相談・無料査定に応じている会社もあるため、売却後の家賃など生活への不安も相談できます。